門番を忘れた皆の謎 | 魔法石の庭3rd

門番を忘れた皆の謎

 早朝、早起きしてしまいました。
 あふ、とあくびをすると、しばらく布団の中でうごうごやっていて、その後スピリット界に飛びます。

 すると、またもや真理矢が引っかかっているので、引っ張り込んであげます。
 真理矢とは、現実でも話はできますが、ちゃんと顔を見て話せるのはスピリット界なので、できるだけそっちで話すようにしています。

「真理矢、その……指輪は……」と、左手の薬指から、人差し指に変えたことを言うと、真理矢はにっこり笑って「構いません。能力のブーストのためでしょう?あげたものは既に姉様のもの。どう扱っていただいても構いません」と言います。
「そういえば、男女が別れるときに男性が『今までお前に買ってやったものを返せ!』とか『奢ってやった金を返せ!』っていうのは、全部無効なんだよね。貰ったものは、その時点で女性のものになるんだって」
 そう、雑学を言い聞かせると、真理矢は
「みみっちい男もいるんですね……」というので、「実は結構そういう男っているんだよね。私は幸いにも遭ったことないけど」とため息交じりで腰掛けた応接室の椅子をぎいーっと後ろに倒れるか倒れないかで遊びます。

「姉様。危ないことはおやめください」と言うので、「平気平気。倒れても、現実とは違って頭蓋骨陥没とかはしないからさ」と言いつつ、ぎい、ぎいと揺らしてみます。
「……喉が渇いちゃった。一旦現実に戻るわ」と言って、現実でコーヒーを入れて、再び戻ります。
「真理矢ー……って、あれ?」と、真理矢がいないので、「なんか用事かな?」と思って再び椅子に腰掛けます。こんどはギーギーしません。……ちょっとだけします。

 やがて、真理矢がコップを持って帰ってきます。
「どうぞ、姉様」と、コップの中身は、コーラです。こんなジャンクなものもスピリット界にあるの?とは思いましたが、「アルテミスからお酒を割る用のものを失敬しました」とやりとげた顔で言ってきます。
「喉が渇くのは、肉体的でもあり、精神的でもあるのですよ。肉体で渇きを癒やしたら、次は精神です」
 そう言われ、しゅわしゅわと泡立つそれをじっと見つめます。

「……炭酸は?」「入れた後に少しだけ抜いておきました」「gj(グッジョブ)」と言って、私はコーラを傾けます。私、炭酸は微炭酸でないと飲めないのです。飲めることは飲めるのですが、口の中が痛くて。
「うん、確かに喉の渇きが癒えた気がする。そういえば、お腹がすいているときに、こっちで姫様にサンドイッチ貰ったらお腹がちょっとふくれたことあったな」
 そう言うと、真理矢は「精神体と肉体は繋がっているのです。科学的には解明されていない分野ですが、たとえばガリレオが当時地動説を唱えても誰も信用せず、さらには審判にまでかけられてしまったように、新しい物事にはいつも『疑惑』『悪意』がつきものなのです」と告げます。

「そういえば、門番のお墓なんだけど、もっとちゃんとしたものを建ててあげたいなって思うんだけど」というと、真理矢は「鳥にお墓……ですか?今でも十分なのでは?」と言うので、「あのね。精肉工場では、必ず動物の慰霊碑が建てられてるの。鯨だって、採ったら戒名まで付けて神として祀ってるんだから。欧米の『頭の脂だけ採ってぽい』ってのじゃないの。昔から、日本はそれだけ動物にも哀れみを持っていたってことだよ」と言います。

 そして、ガイド全員に話を聞いたのですが……全員が全員、きょとんとして「門番?生きてるじゃないですか」と言うのです。「いや、死んだ方の門番なんだけど……」と説明すると、現場を見ていたメローネですら「お前、大丈夫か?」と心配するほど。

「……おかしいですね。ガイド全員が口をそろえて門番のことを覚えていないとは」と、真理矢が廊下を歩きながら険しい顔をしています。
「まあ、あとはセルフィだけだから、セルフィにも聞こうよ」と言って、セルフィの部屋のドアを叩きます。

 導き入れてもらったところで、本題の「門番の墓について」を切り出します。すると、「ああ、お墓ね。いいんじゃないの?どうせかみなも、死んだらそこに埋葬してもらいたいんでしょ?」と何事もないかのように言います。
「セルフィ、実は……」と、他のガイドが全員門番を覚えていないことを告げると、セルフィは「あらあら」と言って扇子で口元を隠します。
「でも、私は何も知らないわよ?門番?門番って誰?」と言うので、「そういうのはいいから、答えをください」と言います。

「だーめ。私からは何も言うことはできないわ。そういう『決まり』だもの」と、セルフィが意味ありげに笑いました。
「まあ、お墓が建ったら、皆信用するんじゃないかしら。じゃあね」と、勝手に話を終わらされてしまい、私と真理矢は途方に暮れます。

「セルフィは何か知ってる?ということは、ガイドは全員口裏を合わせているとか……あーもう!こういう推理って苦手なのに!」と私は金田一のように頭を掻きます。
「しかし、ガイドの様子では、皆嘘をついているようには思えませんでしたが。今、情報を知っているのは、僕と姉様、そしてセルフィ様です。何か共通点はありますか?」

 そう言われ、私は言葉に詰まりました。共通点?そんなものないように思えるのですが……。

「まあ、とにかくお墓を建てよう。セルフィも、『墓を建てたら信用する』って言ってたし」と言って、私は館の敷地内の隅っこにお墓を建てることにしました。
 材質は御影石にしました。敷地内にお墓を建てるのは、「墓は別に穢れたものでもなんでもない。人間、いつかは死ぬ」という私の信条に基づいてです。

「よし、建った。あとは、門番の魂をこっちに呼び寄せるんだけど……どうするんだろ?没した日付でも書いておくとか?卒塔婆とか?」と迷ったあげく、「門番の魂をここに安置いたします」とアファメーションして、金色の光がふらふらとこっちに向かってきて、お墓の中に入ったのを確認しました。

「よし。上手くいったみたい。あとは皆の反応だけど……」
 と言って、またガイドに「お墓を建てたよ」と報告にいきます。すると、「ああ、良かったね」とか「お墓参りもきちんとしましょう」とか、ちゃんと門番の存在を認めている発言を皆します。

「お墓を建てたら、皆、門番を思い出した。これってなんだろう?真理矢、わかる?」と真理矢に話を振ると、「姉様にわからないものが私にわかるわけがありません」と言われてしまいます。
「セルフィ……は、教えてくれそうもないし。まあ、思い出したならいいんだけどね……」と、私は早々に探偵ごっこを諦めます。

 不可解なガイドたちの挙動。これも、スピリット界ならではのことなんでしょうか?
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コメント

あんな衝撃的な出来事を、皆さん揃いも揃って『忘れている』とか、ホラーっぽいですよね。『世にも奇妙な物語』的な。唯一何かを知っているであろうセルフィさんも何も言ってくれないとか……恐すぎる。私はそういう『精神にくるホラー』は嫌いなので、自分の所で同じ事があったら嫌だなぁ(*_*)
でもお墓が建ったら皆さん思い出した様なのでよかったですね。またお屋敷に遊びに行った際にはお墓参りさせて下さいな。

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