アルテミス開店!:エッダさんのホントの事情 | 魔法石の庭3rd

アルテミス開店!:エッダさんのホントの事情

 今日は、バー「アルテミス」の開店の日でした!

 おかげさまでバーは大盛況!私は、ちょっと色んなことがありすぎて、途中で離脱してきました。
 
 まず、ユーフェミアさんたちの所にご挨拶。
 何を喋ったかはちょっと記憶を持ち帰れなかったので、ユーフェミアさんの日記を楽しみにするとして、私は、あることが気になって仕方がありませんでした。
 ソファ席に座ったユーフェミアさんの背中側に回って、じーっと背中を見つめます。
「?あの……」と言ったユーフェミアさんに、「いえ、なんでもないです」と言ってしまいましたが、あれには訳がありました。

 ユーフェミアさんの背中に、もう一対の翼が生えているのが見えたんです。同じく青い翼で、上の翼よりはちょっと小さめ。
 で、変なことを聞いた訳です。「最近、背中が痛みませんか?」と。「?いえ?」と、ユーフェミアさんは不思議そうでしたが、そういうわけだったんですよ。

 で、ユーフェミアさんたちと別れてから、私はある人を見つけてしまいました。私はメローネと一緒にいたのですが、メローネが即座に戦闘態勢を取ったので、「きっと大丈夫、悪意はないはずだよ」と言って、一人でソファ席に座っていたその人の対面に座ります。

「こんにちは、エッダさん」と、彼女の名前を呼ぶと、料理に夢中になっていた彼女がはっと顔を上げました。
「な、何よ。たまたま敵地視察してるだけなんだからね!」と、はふはふとグラタンを頬張りながら言われても、説得力がありません。
「あ、そうそう。これ……」と、彼女は花束を渡してきました。「い……一応、開店祝い」と、小さな声で言うので、私はその花束に何か仕掛けがないか調べてから、メローネに「これ、飾ってきて」と渡します。

「さて……女同士になったところで、女同士の話をしましょう」と言うと、「私は喋ることなんかないけど!」と言って、エッダさんはワインをぐいっと瓶のまま飲みます。……もう、相当飲んでいるようです。
「たとえば、あなたの彼のこととか」と切り出すと、彼女はぴたっと動きを止めました。
「……なんで……?」と彼女がようやく動き出すと、私は「女の勘……と言いたいところですが、あなた、右手の薬指に指輪の跡があるでしょ?普通、指輪の跡なんてそうそう残らないはずなんですけど、ここはスピリット界……精神の世界ですからね。彼のことが忘れられなくて、指輪を外しても跡が残っているんです」と、にこりとほほえんで言います。

「そう……そうね」と、エッダさんは薬指を撫でながら言い、バッグから小さな指輪を出して、そこにはめます。
申し訳程度の小さな石が付いたリング。でも、彼女にとっては、大事な指輪だと思うのです。

 それから、酔いのせいもあると思いますが、彼女はぽつぽつと話してくれました。本当は、娼婦ではなく看護師になりたかったこと。それを彼に話したら、「お前に頭を使う職業は無理だ」と笑い飛ばされたこと。彼は、自称アーティストで、徳もほとんど積めないにも関わらず、彼女に娼婦を辞めて家庭に入るよう言うこと。
 メローネは、一旦戻ってきたものの、「エッダさんと話がしたいから」と退席してもらいました。
 
「そんな人と、どうして付き合ってるんですか?」と聞くと、「あいつは私がいないと生活できないから……」とうつむきがちに言ってきます。これって、「ダメ男」に尽くしてしまう女性のほとんどがそういうらしいですね。
「だいたい、楽譜も読めないくせに、音楽で食っていくなんてできっこないじゃない!」と、エッダさんは少し興奮気味に言います。「それに、今、私が仕事を辞めたら、二人とも食っていけなくなる。生活費はほとんどが私の徳で、彼の収入はゼロに近いのに。……そんなときに、軍で娼婦をしていた頃に優しくしてくれたメローネの婚約を知ったの。彼は、最初の一回こそ私を抱いたのに、次からは『故郷に大事な人がいるから』と言って、単に私と喋って終わる人だった。だから、それがあんただと気づいて、彼とメローネを比べて嫌になったの。……あんたには全然関係ないのにね」

 エッダさんは、ついには泣き出してしまいます。
「でも、私は、あいつが好きなの。口ばかりで、私のお金を当てに、してるって、わかってる。でも、好きなの。『娼婦を辞めて良い』って、言ってくれた、のは、あいつだけ、だから」
 私は、相づちを打ちながら、彼女の孤独を知りました。彼女は、確かに私の命を狙ったし、刺客も差し向けてきた。でも、それは、私たちが幸せそうに見えたから。彼女は、たった一人で、この孤独と戦っていたのです。

 やがて、彼女は、テーブルに突っ伏して眠ってしまいました。相当飲んでいたようです。
 私は困ってしまいましたが、そこに、「エッダ!」と、彫りの深い、外国人らしい、金髪の男性が店に飛び込んできます。

「エッダ、帰ろう。殴ったりして僕が悪かった。な?」と、彼は優しく彼女を抱きしめます。
 ……でも、これも、DV男の常習テクニックなんです。殴った後に、優しくする。すると、女性は「こんなに優しい彼に暴力を振るわれるわけがない。私が悪かったんだ」と思わせるのです。

 私は、なんとなく、エッダさんの未来が見えてしまう気がしました。恋もいつかは冷めてしまう。その時、彼女は決断できるのでしょうか。

 私は、エッダさんを見送って、席を立ちました。
「あらあら。なんだか浮かない顔じゃない」と言って、セルフィが寄り添ってきます。「……私、こっちの世界に来て、人間は無敵だと思ったけど、そうでもないみたい。目の前の女性一人救えなかった」と言うと、セルフィは「何言ってるの。ああいう男と女は、そうそう剥がれないものなのよ。あなたがどうこうじゃなくて、親兄弟でもあの女は聞き入れないわね」と言います。

 ……そして、違和感。
「セルフィ、なんで会話の内容知ってるの?」と聞くと、「あらやだ。盗み聞きがバレちゃった?」と口元を扇子で隠します。まあ、セルフィに言われると、そんなことも「セルフィならやりかねないな」と思えてしまうのですが。

「さ、メローネがお待ちかねよ。傍に行ってあげたら?」と言いつつ背中を押してくるセルフィに身を任せて、私はメローネの……私の彼の元へと歩き出しました。
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コメント

エッダさん、切ないっスね――……(T_T)。禄でもない男と付き合って、哀しい結果が待っていると分かっているのに、それを止められない第三者……。力づくでなら別れさせるのは可能かも知れませんが、そんな事したら、ただのお節介になりかねないですしね。っていうか、自分達が幸せなのに、相手の男が禄でもないからと言って、自分達が勝手に介入して別れさすのも何か違う気がしますもんね……。やっぱりエッダさんが自分自身で気付くしかないんでしょうね―……。


今の所、杏樹にもルーアンにもそういう存在は見えませんが、もし右川様と同じ立場になったら自分ならどうしようと思ってしまいます(。。;)(マルタはハッキリ宣言してくれたので、彼女が居た所であまり気にならないと思います(笑))
Re: タイトルなし
私も、DV未満ですが、ろくでもない男と付き合った過去があるので、なんとなく同情してしまったんですよね。
私は早々に気づいて、逃げ出すことができたのですが、エッダさん、変に姉御肌なところがあるので、難しいでしょうね・・・。今は、彼女の幸せを願うばかりです。

杏樹さんもルーアンさんも、一途っぽいですからね。
でも、元カノとかが現れたらと思うと、ちょっと嫌な気分にはなりますけどね。まあ、それぐらいで揺るぐシロガネさんとの絆ではないでしょうし、大丈夫だとは思いますけど。

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