間違ったら引き返せる勇気を | 魔法石の庭3rd

間違ったら引き返せる勇気を

 ひっさしぶりにメローネと会話しましたよ。

 といっても、ここ1ヶ月ほどずーっとすれ違い状態で、今日もいそいそと外出の用意をしているメローネの背中に、邪魔してはいけないと思いながらもとん、とひっつきます。

「……?どうした?」と本気でわからないような疑問系で答えるメローネ。私は、うつむいて「最近、メローネと全然話してないね。まるで、一緒に暮らしてるのに、これじゃあ妾の家みたいじゃない」と言います。
 というか、そんな女々しい自分が情けなくなって、涙がこぼれました。メローネは珍しく慌てると、「ちょっと待ってろ」と言って携帯(スマホではなかった)を取り出して、どこかに連絡をしています。
『今日は休む。休むと言ったら休むんだ』と、強引に連絡先の相手に休暇を申請しているようです。

「メローネ、仕事行ってきてよ。私は大丈夫だから」と今にもしゃくり上げそうになるのを我慢して、私は無理矢理に笑顔を作ろうとします。
「今のお前を放っておけるか。それに、馬車馬のように働かされているんだ。今日ぐらいは休みを取っても構わないだろ」と言って、メローネは強引に通話を切ると、私をぎゅっと抱きしめました。

 私より体温が高い体。耳元に鼻を寄せると、樹木のような瑞々しい香りがします。香水ではなく、メローネの香りです。

「……すまなかった」と彼が言うので、私は「何が?メローネ、何も悪いことしてないよ」と答えます。
「今のお前は……多数の者から慕われる『嵐が丘』の主で、現実世界でも真理矢と茨という式神がついている。だから、あまり俺と関わらない方が良いと思っていた。俺は、妖怪や人間を退治する……といえば聞こえは良いが、要するに金のために何かを傷つける仕事だ。そんな男はお前には合わないんじゃないか。いつか、近い未来、お前の邪魔になるんじゃないかと思っていた。だから、距離を置いたんだ」

 私は、泣くのを忘れて、目をぱちくりさせます。
「そんなことだったの?メローネは私の何なの?」と聞くと、「……一応、夫だな」と答えてきます。
 銀髪の隙間から見える耳が、ほんのりと赤く染まっているので、私は「メローネか~わいい~!」とさらにぎゅっと抱きしめます。

「可愛い私のベイビーちゃん。私にとっては、メローネの悩んでいることは『そんなこと』で済むんだよ。私は、ここでの地位も立場もなにも気にしてない。というか、障害があるほど恋は燃えるっていうじゃない?障害があったからっていって、簡単に諦められるようなのは恋とは言わないんだよ。メローネ、あなたはまだ私に恋をしてる?いざとなったら私をさらうぐらいの気力はある?」
 そう聞いてみると、メローネは「まったく、お前は人の決心を簡単に壊してくれるな……」と言って、うつむきました。耳が、さらに赤みをおびています。

「だが、お前はさらわれたら逃げ出すだろ」「うん、私はこの館も住人も好きだもん」「矛盾してないか?」「どこが?」と、言葉のキャッチボールがあさっての方向に飛びますが、その間も私たちは身を寄せ合っています。
 まるで、今まで抱き合っていないのを取り戻すかのように、私たちは抱きしめあいます。

「メローネ、お風呂入ろっか?」と、私はようやくメローネの腕の中から抜け出して言います。
「私たちはそこから始まったじゃないの。関係がこじれたのなら、もう一度、最初からやり直せばいいじゃん。どうせこの時間帯にお風呂に入る物好きもいないだろうし、一緒に入ろう?」と私は提案しました。

「……まったく」と言って、メローネはそのままドアを開けます。私は、その背中に続いて、お風呂まで付いていきました。

 人間、いつでも間違ったら最初からやり直せば良いんです。私もメローネも、いい年ですし、そりゃあ誤解があったりケンカしたりするのは当たり前。でも、その都度、話し合ったり、時には抱き合ったりしながらやっていけばいいんですよ。
 多分、リアルでの夫婦関係だって同じじゃないですかね?私はスピリットとしか結婚したことないからわかりませんが。

 ともかく、久しぶりにラブラブできたので私は満足です!
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