夏の調べとは愛の言霊 | 魔法石の庭3rd

夏の調べとは愛の言霊

 スピリット界で、私は茨の部屋にいました。

 そして、「ねえ茨。どうして私は病気になったんだろう?」と、切り込んだ話題をさらけ出します。
 すると、「遺伝だね」「え?遺伝?」「そう。遺伝だよ」と言われ、私は目を軽く見開きました。遺伝ときたか……。

「あんたのばあさんも鬱になってるだろ?今は薬を飲まなくともやっていけてるようだが……こういう精神病も、大本を辿れば遺伝なんだ。もちろん、家族の誰も発症していなくて、突然発症するやつもいるだろうさ。でも、大抵は遺伝だ」とか。

「遺伝……そうなのかな。確かに、うちも、祖母が鬱になったりしてたけど」というと、「まあ、一理あるってことだけだがね」と茨はキセルを置き、最後の煙をふうっと空中に吐き出します。

「『利己的な遺伝子』は読んだことあるかい?」と言われ、私は首を振ります。周りからは「文学少女」扱いされている私ですが、基本的にあまり専門書は読んだりしません。だって難しいんですもん……中卒の脳みそじゃ追いつきませんよ。

「そうか。まあ、簡単に言うと、『遺伝子というものは、他者より優位に立ちたがるもの。その遺伝子によって人間は全てがプログラミングされている』という感じの内容なんだが。つまり、『人間は遺伝子に操作されている』という考え方だね。確かに鬱は社会的に排除される側のものかもしれない。けれど、遺伝子の組み合わせで言うと、その苦しみや悲しみも、全部意図的なものなんだよ」

 私は、茨の言っていることがあまり理解できませんでした。私は、遺伝子に意図的に管理されている……?

「ふ。まあ、戸惑うのも無理はないさ。だが、人間なんて、ニューロンとシナプスと電気信号で動いてるんだよ?精神科の薬なんてものは、脳波を調べて、脳内の化学物質に働きかけるものだしね。ま、この話はここまでにしておくか。あまり楽しい話でもないしね」と、茨は立て膝からあぐらに変えます。

「……茨。着物でそれやられると、おパンツ見えてるけど」と言うと、「見せてんだよ。……いや、ジョークだが。でも、あんたは基本的には同性に劣情を抱くタイプの人間ではないだろ?真理矢とのことだって、あっちから熱烈に告白されて受け入れたようなものだし。ま、バイだってことは認めるがね」と屁理屈をこねられます。
「はあ。まあ、いいけど。多分、私は茨が男だってあんまり気にしないと思うし」と言うと、「まあ、そうだろうね。あんた、強引なタイプの男は好きじゃないだろ?しかしまあ、メローネは別ってやつかい」と言われます。

「そうだ。私、茨に聞きたいことが……聞きたいこと……?あれ……?」と、私は、現実世界で用意してきた問いを、すっぱり忘れ去っていました。
「ふん。忘れるってことはそうそう重要なことでもないだろ」と言われ、「ええと……まあ、そうなんだろうけど」と曖昧に相づちを打ちます。
 スピリット界であったことを思い出せないことはあっても、現実であったことを思い出せないってこともあるんですかね?よくわかりませんが。

「さて。腹が減ったね。キッチンで何かつまんでくるか」と、茨が立ち上がり、私も「じゃあ、私は真理矢のところにいるから」とそこで解散します。
「茨に聞きたかったこと……確かにあったはずなのにな。どうしてだろう?」と思いつつ、真理矢の部屋のドアを開けると、真理矢が「姉様、お待ちしていました」と、濃厚なキスをしてきます。

「真理矢……最近、こっちでもあんまり構ってあげられなくてごめん」と言うと、「まあ、姉様は色んな方と縁がありますから。そこのところはわきまえております」とまだ感触の残る唇を人差し指でなぞられます。
「しかし、姉様の夫は僕ですからね。メローネも夫ですが、今は僕だけの姉様ですよね?」と両手を握られながら言われ、私はふっと「ああ、可愛いなあ」と思って、今度は私から真理矢に口づけしました。

「……姉様」と真理矢が少し呆然とつぶやくので、「いつもは真理矢からしてもらってるから、お返し」と視線を逸らしながら言います。
「いいえ。嬉しいです。とても。……この間のお花見がありましたよね?」と、いきなり飛んだ話題に「え?ああ、うん」と戸惑いながらも返事をします。
「……あの時、桜の中で二人で話をしている姉様と姫様がとても仲が良さそうで。……半ば無理矢理引きはがしたのも、僕の醜い感情あってのことだったんです。すみませんでした」と、真理矢が頭を下げるので、「へ、平気平気。真理矢は私の夫でしょ?多少はやきもちとかもあって当然だし」と私は頬を掻きます。

「……そう。僕は、姉様にとっては、式神で、メイドで、女性で、夫。それだけの話ですよね。……ただでさえ、同性の恋愛という理解が乏しいこの世界では、それもなかなか……」というので、「ううん。真理矢は無理に考えなくていいの。男女は男女の、女性同士は女性同士の良さがあるんだよ。ビリー隊長も言っている!『バイセクシュアルでないことは、人生の半分を損しているということ』だと!」と、びしっとポーズを決めると、真理矢が「……それって、僕にも愛人を作れってことですか?」と言ってくるので、「あー……そういうのはナシの方向で」と、一応止めておきます。

 それから、キスしたり、抱き合ったりしながら、私たちは時間を過ごしました。
 性別なんて関係ない。愛する人と愛を交わせる、それが何よりも尊いことなのでしょう。
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