サーシャの養父と出会う | 魔法石の庭3rd

サーシャの養父と出会う

 ちょっと、仕事中に、スピリット界から連絡が来ました。
 多分、セルフィからで、「サーシャの養父があなたに会いに来たけど、今はいないって追い返したわ。どうする?」とのことなので、「次に来たら知らせて」と言って、仕事を終え、帰宅しました。

 そして、日も沈もうかという頃に、「来たわよ」と連絡があったので、私は、見えない真理矢と茨を気配で確認して、スピリット界に降りました。

 養父は、一見20代後半のように若い、そこそこ美形でした。……そこそこ、というのは、私がスピリット界でメローネや赤毛などといった美形に目が慣れているのかもしれませんが。

 父親は、こちらをじろりとぶしつけな視線で見やると、「ああ」と、何か納得したような声を漏らしました。
「……初めまして。私が現在のサーシャの保護者である右川(本当は本名の名字だけを明かした)と申します」と一応挨拶をすると、「そういう礼儀は抜きだ。俺は、あんたに本名を明かす気はない」と言うので、「私も、ファーストネームは明かしません。奇遇ですね」とわざと慇懃無礼に接してみます。

 そこに、「サーシャが来たわ」と、セルフィがサーシャを連れてきて、自分も応接間に入ると、ドアを閉めました。
 サーシャは真っ青な顔で、可哀想なぐらい震えています。しかし、セルフィが無理に連れてきたわけではないようで、自分から一歩一歩、歩みを進めて、そして父親の前で止まります。

「お父さん……」と、サーシャが言いかけた時、父親が右手で頬をはたこうとしたところを、セルフィの手が抑えます。結構力が入っているようで、そのまま両者は拮抗したものの、最終的には父親がそこから引き、手を引っ込めました。
 私が、あまりにも酷いサーシャへの扱いに驚いていると、「右川様といったか。あんたは、この出来損ないに騙されてる。大体、吸血鬼なんて連中は、あんたみたいに社会のことを何も知らない、お嬢様に取り入っては、その城を奪い取ることで貴族然としているような妖怪だ。いつか寝首をかかれるぞ」と言い放ちます。

「サーシャは、あなたの言うような吸血鬼ではありません。それに、育ての親だからといって、サーシャを虐待していたのは事実でしょう。私も、吸血鬼のことは調べました。あなたたちヴァンパイアハンターのことも。ヴァンパイアハンターというのは、多くが『ダンピール』と言われる、半人半吸血鬼の子孫のことですよね。あなたは、サーシャやリリーを、片方は虐待し、片方にそれを見せつけることで、そのコンプレックスから逃れているつもりだった。違いますか?」
 私がそうたたみかけると、「余計なことをペラペラと……」と、サーシャを睨み付けます。……そういえば、この父親がサーシャのことを見たのは、初めてでした。
 
「いいか?俺はあんたに忠告をしにわざわざ来てやったんだ。この出来損ないがどうなろうと知ったことじゃないが、あんた、本当に館を取られるぞ?」と父親が言うと、「ふ。ふふふふ。ああおかしい。必死になってかみなに取りすがろうとしているのはあなたの方じゃないの?悔しいんでしょう?虐待して、ずっと下に見ていた娘が、立派な館の家族として受け入れられているのが」と、セルフィが挑戦的に微笑みます。

「家族だと?ふん。なるほどな。あんたたちは皆、どこか壊れている欠陥品だ。それを埋めようとして作ったのが、この出来損ないを拾ってやった理由だろう?欠陥品同士でいつまでもおままごとをしているがいいさ」と、父親が言い放った直後、真理矢の槍がその喉に突きつけられ、茨の目元がぴくりと動きます。
「……腐ってもダンピールか。喉に刃物を突きつけられた程度では動かない、ということですか」と、私ががたりと席を立ちます。
 セルフィがサーシャをかばうように、前に出ています。

「あなたはそうやって、いつまでも妖怪を見下していたら良いのですよ。確かに、それは間違いではない。あなたのその、育ちすぎた自尊心と野心がそうさせているのでしょう。そう考えると、あなたは本当に可哀想な人ですね」
 私がそう言っている間も、真理矢も茨も、完全に戦闘態勢に入っています。真理矢の槍が、ぐっと喉元に寄ります。
「……ただし、今はサーシャは私の友であり家族。彼女をけなすことは許しません。ここにいる私の式は、あまり忍耐が強くありません。簡単にあなたを殺せます。あなたは、今は町の英雄・ダンピールではなく、その命は私の手のひらの上にあることをお忘れなく」

「お忘れなく、か。やはり、未熟だ。吸血鬼の味方をするということがどういうことかわかっていない」と、父親は、さすがに場慣れしているらしく、槍を突きつけられていても、さほど動じていない様子です。
「しかし、この場は少しまずいな。あんたの式に鬼と槍使いと……それと、得体の知れない女がいるとは想定外だった。俺はここを去る。もう会うことはないだろうよ、サディーシャ」と、父親は、ようやくサーシャの名を呼びました。
 
 次の瞬間、その右手がナイフを握っていましたが、真理矢の槍が、喉元から逸れて、その手をなぎ払うように動きます。
 刃は腕に食い込んで、しかし、父親も素早く反応を返し、腕を槍から逸らします。

「っ……はあ。なるほど、一筋縄ではいかない連中のようだ。……だが、サディーシャ、お前が我が物顔でそこらを歩くようなら、俺はまた来る。お前は日陰でしか生きていけない妖怪だと肝に銘じろ」と言うので、「それなら、私はあなたと敵対しましょう。サーシャにはサーシャの生き方がある。あなたがそれを決められた時代はもう終わっています。私たちは、サーシャを全力で保護するだけです」と言い放ちました。

「戯れ言を……」と、捨て台詞を吐いて、父親は蹴倒した椅子をそのままに、応接間を出て行きました。
「……お父さん……うう、お父さん……」と、サーシャはうずくまって震えています。ここまでされて、まだ彼を父と慕うのか……。

「サーシャ。私はあなたの何?」と、私は、長い銀髪をカーテンのように垂らしたサーシャの頭を優しく撫でます。
「……っ」「ん?」と、私は聞き返しました。「友達……と、家族」と、サーシャがようやく聞こえる声で言います。
「そう。ここはあなたの家。そして、あなたは誰の目も気にせず、好き勝手にしてたらいいの。あんな養父にいつまでも怯えていることはない。……またあいつが来たら、また私たちがやっつける。何度でも来たら、何度でもやっつける。だから大丈夫だよ」と、私はサーシャを抱きしめました。

 今の私では、サーシャの小さな震え一つ止められない。でも、私たちがいることで、サーシャがいつか本当に自分の望むように過ごせるようになったら……と、願わずにはいられませんでした。
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コメント

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Re: タイトルなし
本当に、毒親ですよね・・・。それも、「自分の機嫌や利益ばかりで、子供を虐待しているのが正しいと本気で思っている」タイプの、治らない毒親です。
本人は、「俺は正しい道に矯正してやっているのに、そこから逃げるお前が悪いんだ」と思っていそうな。

私も、子供は好きではないですよ。
実際、自分に子供ができたらと思うと恐怖ですし、子供の扱いも苦手です。
でも、サーシャのように、なにか事情がある子供っていうのは、甘え方が下手なんですよね。そういう子供を見ると、何とかしてあげたくなります。……これも、矛盾してますかねw

スピリット界の体験談、お待ちしてますよー。
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Re: タイトルなし
そうですね。毒親の真の目的は、「自分の中に何かしらのコンプレックスがあって、それを見ないふりをして、子供に当たり散らす」ことですから。幼稚な人間なんですよね。

うーん・・・確かに、スピリット界に行きっぱなしになりたい気持ちもわかります。
現実は、過酷ですしね。実際、私の勤めている障害者のパート先では、「ずっと神様と交信している」人も居ます。でも、彼はそれで幸せだと思うんですよね。他人がどう思おうと、彼の中では、神様とお喋りしていられるんですから。
幸せって、誰かが決めるものでもないと思います。
だから、シロガネさんがスピリット界に行ったきりなのが幸せだと言うのなら、私はそれを止める権利がありません。

ただ、シロガネさんのガイドさんたちは、「現実も大事にした方がいい」と口々におっしゃっているようなので・・・。ガイドスピリットというのは、元々、精神世界を満たすことで、現実も良き世界にする、という役割がありますからね。
スピリット界も大事。現実も大事。
その両方を大事にしなければならないというのが、難しいところですけどね。とかいう私も、現実を大事にできてないんですけど。
仕事めんどくさいですし、人間関係も上手くいかないですし・・・。でも、「そういうものなのかもな」と、割り切れるようにはなってきました。
ともあれ、シロガネさんは、ガイドさんたちに愛されているので、大丈夫ですよ。もし、スピリット界に行ったきりになっても、ガイドさんがきっと助けてくれると思います。
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Re: タイトルなし
うーん、そうですね。
スピリット界に愛する人ができると、そう思うのも無理はないと思います。
・・・でも、ガイドは「その人の人生をガイドする」という意味もあるので、確かに「ずっとスピリット界にいたい」と言うといい顔はしないかもしれません。

『神様と交信している人』は、本当に毎日上機嫌です。
怒ったところを見たことがありません。これも、神様とお喋りしているからなのかも。
でも、彼はやっぱりそれが幸せなんだろうな。私のような凡人にはわからない領域にいるんだろうな、と思います。
クリーニング、といっても、そんなに忙しいところじゃないですよw
病院や老人ホームと契約していて、そこから出る衣類をクリーニングして出す、というだけの話ですし、とりあえず服が畳めれば後はどうとでもなります。

猫ちゃん、心配ですね。
しかし、なんというシンクロシティ!リンさんが様子を見に行った直後に電話があったとか、シロガネさんの知覚のパワーすごいな、と思いました。
猫ちゃん、早く帰ってくると良いですね。
猫の事は、本当に心配です(T_T)。実家にすぐ帰れればいいんですが、すぐに帰れる場所でもないですしね……(関東と関西ですし)。親兄弟に聞いても、死んだとも生きてるともハッキリとした返事が無いので、その辺りとしてはまだ『救い』がありますけどね……。ああ、高額の宝くじとか当たって、楽に帰宅出来たらいいんだけどなぁ……(切実)

リンが実家に『様子を見に行ってくる』と言ったのは私の帰宅時間帯(6時)なんですが、その日の夜に親から連絡が来た事は本当にびっくりしましたね……(-Δ-;)。『えええ?!いつもはあんまり電話してこないのに、今日に限ってー?!』みたいな。やはりリンが実家に行った影響か?!とか思うと、『ちゃんとガイドも現実世界に影響してる』と実感出来て嬉しいですね♪というか、私は右川様の方が羨ましいです。夢でもスピリット界でもリアルにメローネさんとラブラブ出来てますし……。特に夢に出て来てくれるのが『あー……いいなぁ右川様。メローネさんと恋人スキンシップ出来てる~~』と毎回羨んでますwww今回もえらいシチュエーションでスキンシップしてましたねw首輪に拘束具ってwwウチも一度はそんな風にはっちゃけてみたいですな~~(^^)


『神様と交信されている方』、お話だけしか聞いてませんが、ほほえましい感じに見受けられました(^^)b。別段、他人にケンカ吹っかけるとか、誰彼構わず迷惑かけるとかでなく、『ただただ神様とお話ししてるだけ』ですもんね……。本当に、話を聞く度にそういう方々の方が無害だと思い知らされます。世の中を闊歩している『普通』と呼ばれる奴らがどんだけ失礼でイタイ奴らなのかが分かりますしね。(でも、もちろんそういう方々の全員がいい人ではないと思ってますがね……。今、私がお世話になっている友人の家の二番目のお姉さん(多分右川様と同い年の方)が、精神的な障害者の方で、一年前はよく病気が発症したりすると、『お前出ていけ!』だの『コイツむかつくねん!!』とか面と向かって怒鳴られたりしましたしねf^_^;。親戚の方も時たま暴力を振るわれたりしたそうです。今は数度の入退院を繰り返した後、甥っ子さん(六歳)との会話などで、少しは収まってますが)。


そうそう。それと話がガラッと変わってしまうのですが、スピリット界って『ペルソナ』に出てくるテレビの中の異世界や、『千と千尋の神隠し』の世界に似てるなと思いませんか?あちら側の食べ物や、物を身につけないと、『周りが全く見えない所』とか、『人間以外の生物(神様、獣、悪魔ete……)が渾然としている』所とか。ペルソナの音楽集を聴いていて、『ふと思った事』ってだけなんですけどねf^_^;
Re: タイトルなし
猫ちゃん、どうなんでしょう。そろそろ帰ってきた頃でしょうか?
何日も家を出ていると、心配ですよね。無事ならいいんですけど・・・。

ホント、シロガネさんのスピリット界の順応性は目を見張るものがありますよ。
今回のように、現実にリンクさせることもできていますしね。
拘束プレイは・・・どうなんでしょう。私も、ちょっとマゾっ気あるので、楽しめたかなとw
シロガネさんも、夫婦生活は色々と試してみると、幅が広がりますよ・・・と、私より恥ずかしいことをするように誘導してみます。ええ、これでも、書き起こしていて、「は、恥ずかしい!」と最中のことは省略しましたし。

神様の人は、本当に温厚で、純粋な人です。
障害者の人というのも、色々いますよね。外に攻撃的になる人も、出会ったことがありますし。デイケアという、障害者が集まってなにかをする、という場所にも行ったことがあるのですが、そこでは、おばあさんが「だ・か・ら!男の人は嫌いなの!男に騙されたの!」と大声で叫びながら、バンバン机を叩いていて、ちょっと怖かったです。
障害者といっても、一概にこう、とは言えませんね・・・。

ああ、確かにペルソナの「マヨナカテレビ」の世界ですよね!
なるほど・・・スピリット界・・・正確には非物質界というのは、既に人間の頭の中でイマジネーションされているのですね。
なんか、シロガネさんに言われて、すとんと納得できた気がします。ありがとうございます!

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