人間は人間が裁くもの | 魔法石の庭3rd

人間は人間が裁くもの

 今日も、茨と二人っきりです。
 何故かと言うと……。

「茨~、メローネのこと『真理ちゃん』って呼んで、真理矢のこと『メロりん』って呼んだら2人とも口きいてくれない~」と茨の真っ正面の椅子に座って言います。
「…………いや。さすがのあたしもドン引きしたよそれ。別に、本人の前で言うならともかく、正室と側室の名前入れ替えて呼ぶとかないわー……」と、顔を引きつらせて言います。

「だって実験したかったんだもん。正室と側室、逆に呼んだらどうなるかって。わき上がれ!私の好奇心!」とびし!とポーズを決めて言うと、「……好奇心猫をも殺す、って言葉もあるんだよ。というか、今ほどあんたが理系脳じゃなくて良かったって思ったことはないよ。あんたが理系に進んだら、マッドサイエンティストになれる可能性が大だね」とやっぱり引き気味に言われます。

「というか、あんた、二人の機嫌が悪くなるって知っててやっただろ?」と言われ、「いやあ、それほどでも」「褒めてないよ」と言われます。
「ん~……なんていうか、私、2人と結婚したじゃん?それから、なんとなくお互いのことは深く関わらないって感じになってて。そんなんじゃあ、ストレス溜まるでしょ?だから、私が悪人になって、怒ってくれたら……って思ったんだけど」と、私は手にした飛車の駒を弄びます。ちなみに、私たちが今やっているのは、「王将以外全部飛車と角将棋」です。これ、ロケットランチャーみたいなもので、絶対先攻の方が勝ちます。

 で、二人して適当なことをまた話していたのですが、ちょっと記憶に残っている話を。
「茨って、鬼だよね?鬼って、地獄の鬼とはまた違うの?てか、天国とか地獄って本当にあるの?」と私が聞いてみます。
 茨は「ううむ」とうなって、「天国はあるが、地獄はないよ。地獄ってのは、そもそも宗教的に戒律を破らせないように『人間が作った概念』だからね。だから、犯罪者はちゃんと今世で裁かれないといけないのさ。馬鹿馬鹿しい戒律でいうと、そうだね。仏教の『畜生界』の考え方とか。『現世で罪を犯した者は、人間になれず、動物として生まれる』ってやつだね。そんな馬鹿なことあるわけないだろ?」

 私は、「じゃあ、なんで天国はあるの?」と聞いてみます。
「待ってな。順番に話すから。ええと、天国だね。それは、いわゆる『十分に輪廻転生を繰り返した魂』がようやく入れてもらえる所なんだよ。だから、一回死んだぐらいでそうそう行ける場所じゃない。普通の人間の魂は『幽界』っていって、霊魂だけの状態で、しばらくそこで過ごす。そして、それに飽きたら『そろそろ次の転生に行きたいんですけど……』って自分から名乗り出るんだよ」

 そう言われ、私は「じゃあ、地獄そのものがないんだから、地獄の鬼ってのもいないと……?」と聞きます。
「いや。地獄の鬼は存在する。というか、人間が作った」と言われ、「は?」と私は目を見張ります。
「確かに、何かで管理されている『地獄』ってところはない。けど、殺人や暴行を繰り返して、それで素知らぬ顔で罪を償った・もしくは上手く逃げ切ったと思っている犯罪者には、周りの霊魂から袋だたきに遭って、人間の作った『地獄』に投げ入れられるんだ。そこには鬼がいる。ただし、この鬼も、一般的なの式神の鬼と一緒で、人間が作ったもんだ。そして、鬼たちは時代のニーズによって役職が変わっていくんだよ。たとえば、今は畜生界も消滅しかかってるし、賽の河原なんかはもうない。その代わりに、新しい犯罪について部署を移動させられるんだ。……まあ、サラリーマンと同じだね」
 
 茨はそう言うと、「はい、王手」と駒をぴしゃりと打ちます。「……まあ、先攻が茨になった状態で、普通先攻が勝つわな」と、負け惜しみを言いながら、私は駒を片付け始めます。

「んん?ということは、あの世でも、人を裁くのは人ってこと?」と聞くと、「その通り。人間を裁くのは人間しかいない。神々は、どんな犯罪者でも、救おうと努力するんだよ。でも、人間には『義憤』ってのがあるからね。人を傷つけ・尊厳を奪った人間に対しては厳しいんだよ。まあ、ここのところが、人間が社会動物であるゆえんなんだけどね」と、茨は、私から受け取った将棋の駒をケースにばらばらっとしまいます。

「ふーん。結局人間は、『群れ』でしか生活できないってことね」と言うと、「あれ?あんたはてっきり『犯罪者なんて皆殺しにしろ』って派閥なのかと思ってたよ」と言われ、「……まあ、否定はしないけど。ジャン・バルジャンみたいに、貧しくてパン一つを盗んだ、とかならまだ同情の余地があると思うんだけどねえ。でもまあ、基本的には私は、死刑も賛成だし、右翼寄りの考え方だし、時代のニーズに合わせて変わるなら、地獄もあっていいとは思うね」と答えます。

「ちなみに、今はどんな地獄があるの?」と聞いてみると、「うーん……強姦犯地獄とか」とか言われます。
「え?何それ?」と私が聞くと、「その名の通りさ。強姦事件を起こしたバカが入る地獄だよ。そこで何が起きてるのは……まあ、皆までは言わないけど」と、茨は私の方をちらりと見やります。

「……かみな。あんた、強姦犯をモノによっては一番嫌ってるだろ?でも、それは、現代日本に生きる人間の多くが『強姦犯を隔離しろ』って言ってるんだ。だから、普通の感覚なんだよ」
 茨はそう言って、「さて、適当に答えてきたけど、これで質問は終わりだったね。そろそろメローネと真理矢の所に戻ってやりなよ。ちゃんと謝るんだよ」とのたまうので、「……うん」と私は頷きました。

 そっか……やっぱり、「人間を裁けるのは人間だけ」なんだ……。私が今死んだら「ニート地獄」とかに連れて行かれそうだし、頑張って働き口を探さないとな……。
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