鬼同士の戦闘 | 魔法石の庭3rd

鬼同士の戦闘

 昨日のことですが、茨に来客が知らされました。
 いつも通りの来客係、女教皇が、寝巻き(ネグリジェ)姿のままで、「茨に来客よ」と告げます。
 私たちは顔を見合わせました。館の主である私ではなくて、茨個人に?

 その時、私たちは「語彙の増やし方」について話していたのですが、茨は多少面倒そうに応接間の窓から体を離し、キセルの中のまだくすぶっている火を携帯灰皿に押し込むと、キセルをしまいます。
 ……ゴミ箱にそのまま入れたら、多分ファイヤー!すると思いますしね。

 すると、応接間のドアが開いて、茨にそっくりな……髪型だけは両サイドにシャギー入りのセミロングの、小さな角が二本その頭に出ている女性が入ってきました。
 そして、茨を見つけると、「おー、茨。おっすおっす」と片手を高く上げます。
「おっすおっすじゃないよ。勝手に入ってきて……」と茨は面倒そうに言いますが、一応その掲げられた手のひらを自分の手のひらとパン、と合わせてハイタッチします。

 そして、私の方にぐるんと体を回すと、「……ふーん?」と、何故か疑問系で足先から頭の上まで眺められます。
「あの……私はここの館の主で……」と話すと、「知ってるよ。かみな様だろ?町じゃあ評判だよ。……しかしまあ、地味だね」と言い切られ、ちょっとショックを受けます。
「胸もないし、尻もない。ふーん。顔の彫りも深くないしね。ああ、地味だ地味だ」と、その人は言ってみせます。

「……かみな、こいつはアカネっていって、あたしと同じ鬼だ。……ただ、ちょっとばかりデリカシーに欠けるのが鬼のサガってやつでね。許してやってくれないか?」と茨が私とアカネさんとの間に入ります。

「うう……そりゃあ、鬼みたいにボンキュッボンではないですけど……そんなに地味だって連呼しなくてもいいじゃないですか~」とちょっと落ち込んでみせると、茨が「あいわかった。よし。アカネ、あたしと一勝負しようじゃないか。負けたら、かみなに謝罪するってことでどうだい?」と拳を合わせると、アカネさんが「ふん?じゃあ、あんたが負けたらあたしの靴を磨いて貰おうか。ちゃんとクリームを使って、徹底的にね」と勝負を受けようとします。

「ちょ、ちょっと。あんたたち、鬼なんだから、自分の力ってものをわかってやってるよね?当たり前だけど、館の中で暴れたりしないでよ。もちろん、自然の景観を損なうのも禁止で!」と私が言うと、「わかってる。任せときな」と茨が背中を向けたままでひらひらと手を振ってみせて、アカネさんは「おう。ハンデがあるほど勝負は燃えるからね」と訳のわからないことを言います。

 内心ハラハラしながらついていくと、鬼たちは外に出て、玄関をくぐり、山の頂上付近へとタタタっと駆け上がります。
「ここでいいか。かみな、あんたは審判だからね。ちゃんと見ておいで」と茨が言うので、私は「わ、わかった」と引き受けます。

 次の瞬間、すごい勢いで、茨とアカネさんの拳同士が打ち合います。まるで大岩同士がぶつかり合うような、ガン、という鈍い音が響きました。
 そして、アカネさんが回転しながら足を出して、茨の足を払おうとすると、茨はジャンプでそれを避けて、アカネさんの懐に潜り込み、拳を腹に打ち付けます。

 アカネさんが人形のように吹き飛ばされると、頂上付近の岩にガツン!と当たって、岩がぼっこりとへこみます。
 アカネさんは、しかし、追撃する茨の蹴りを避けると、次は茨に向かって跳び蹴りを放ちます。茨は一瞬前にガードしましたが、それでもガガガッと衝撃を殺せずに後ろに後退します。

 私は、鬼同士のケンカを目の当たりにして、ぽかーんとしてしまいます。
 てか、審判って……私、どうすりゃいいの?
 そう考えていると、「まったく……昼間から何をしているのかしら?」と、背後にセルフィが近寄ってきました。「あーあ。鬼たちは本当に変わっていないわね。ケンカと酒が好きで、それは男女関係ない。こうして、かみなへの守りを私がしなきゃいけないじゃないの」と。

「でも、ケンカって昼間からするもんじゃないの?」と問うと、「ふん。鬼たちは、要するに『バンカラ』なのよ。あなたには死語かしら?不良が夕方頃に殴り合いのケンカをして、それで『お前、やるな』『お前こそ』って友情を深めあうってやつ。あの時代からまったく変わってないのよね。……まあ、鬼なんてものは、バンカラなんて言葉が流行るずっと前……古代の頃からああいうケンカを続けているわけだけど」と、少々あきれている様子です。

「はあ……やっぱあきれちゃいますよね」と私が言うと、「当たり前よ。何かと言えばケンカか酒で。あんたらは横山やすしか、って」と、セルフィも長く生きているせいか、微妙に言葉のチョイスが古いです。
 しかし、再びケンカの舞台に目をやると、アカネさんが「はあ……はあ……相変わらず強いね。だが、これは避けられるかなっ!」と、山の頂上の大岩をなんとぶん投げてみせました。
 茨は大きく旋回して飛び、なんともなかったのですが……ズウ~ン……と、山の下の方から岩が落下した音が響きます。

「……あんたら……」と、私はつかつかとにらみ合う茨とアカネさんを引きはがします。そして、蔦の能力で、彼女らを縛り上げて、空中に浮かせます。
「アカネさん!私、言いましたよね?『景観を損なわないように』って!めちゃくちゃなことしてくれてるじゃないですか!」そして、茨に向かうと、「茨も。大岩を体でへこませたり……あんたらはサイヤ人か!?止め!この決闘は中止!」と両腕をぱぱぱっとクロスしてみせます。

「い、茨……あんたのとこのご主人、めっちゃ怖いんだけど」とアカネさんが笑顔を引きつらせて言います。「ああ。普段は大人しいんだがな。何かあいつの中のルールを破っちまうとああなる。今回は、岩を投げたことだろうな」と、茨も蔦に巻かれながら言います。
「ともかく、二人とも失格だから。別に私に謝ってくれなくてもいいし、靴磨きもしないでいい。それで良いでしょ?散々暴れたんだから」と、その場を取り仕切ると、茨もアカネさんもぶんぶんと首を縦に振ります。

「じゃあ放してあげる」と言って、蔦を体の中に引っ込めると、茨もアカネさんも、気まずそうにしています。
「……お茶を応接間に用意させるから、2人ともお風呂に入って体の汚れを落としなさいよね」
 そう言って、ふいっと2人に背を向けると、私は山を下りて中腹の「嵐が丘」に到着します。
 仙女のように浮いていたセルフィが、「お疲れ様、かみな。ふふ、良い子だったわね」と言って、頭を撫でてきます。
 まったく、鬼たちのケンカときたら。心配するこっちの身にもなってほしいですね。
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