新しい式神・鬼さん | 魔法石の庭3rd

新しい式神・鬼さん

 スピリット界で、大きな動きがありました。

 私があっちに降りると、サーシャが来て、「あんたに客よ」と言われました。
 誰だろう?と、色々と思い当たるふしがあるので、「応接間に呼んで」と言って応接間への扉を開けましたが、後ろからメローネに「なんだか嫌な予感がするんだが」とぼそりと言われます。「え?襲撃とか?」と振り向いて言うと、「違うと思うが……どっちかというと、厄介という意味だな」と言いつつ、メローネは「俺はここにいる。何かあったら呼べ」と言い放ってベッドに寄りかかります。

「厄介って……」と思いつつ真理矢と応接間へのドアを開けると……。

「よ。邪魔してるよ」と、黒髪の美しい、日本美人な、しかしその頭からは二本の角が生えた鬼と、それとアラハバキ様が人間の美形男子……童顔のサッカーの内田選手の姿でテーブルを囲んでいました。
「鬼さんにアラハバキ様?一体これは何の集まり?」と言うと、「いやね。ちょっとあんたに提案があるんだ」と鬼が言います。

「提案……あ、却下します」と言うと、「まだ何も言ってないだろ。何、あんたにとっては良いことだよ」とニヤニヤと言われます。
 そして、「あんた、あたしを式神にするつもりはないか?」と、とんでもないことを言い出しました。

「式神って……」と言って、真理矢を振り返ると、真理矢はぶんぶんと首を振って「ノー」の意志を見せます。
「いや、そんなこと急に言われても」となんとか穏便に済ませようとすると、アラハバキ様が「……こいつがこういうときは、100年単位でないとコトが動かん。つまり、向こう100年はお前の式になり続けると言うことだが……さて、どうするか」と、ヒゲの生えなそうな顎をつるりと撫でます。

「どうするか、じゃなくてですね。ここは穏便に帰って貰うことはできませんかね?」とアラハバキ様に言うと、「なんだなんだ、どうにも冷たいね。あたしが式神になれば、あんたは100人力だよ。何せ鬼の力なんだからね。どうせあんたのことだから、あたしを脳筋のアホだと思ってるかもしれないが、これでなかなか頭も働くんだよ?」とサーシャが出したと思われる紅茶をひとすすりしてニヤリと笑います。

「鬼さん、式神になったら、私より力が落ちちゃいますし……」と言うと、「問題ない。今の力のまま、受け継がせれば良いんだ。『強くてニューゲーム』ってやつかい?ちょっとばかりズルをさせてもらうよ」と言うので、「アラハバキ様、それってホントですか?」と言うと「……残念ながら本当だ。私もずいぶん説得したんだが、こいつはほら、こういうやつだろう?まったく、鬼というのは……」とほとほと困り果てたように言うので、私も何も言えなくなります。

「……ん?この沈黙は、オッケーってことでいいのか?オッケーか?」と鬼が言うので、「あなたは、なんでそうプラス思考なんですか!今の会話聞いててオッケーなわけないでしょ!」と叫びます。
「あーあーそうか。人間は冷たいなあ。一人ぼっちの鬼を捨てておくのか。冷たい冷たい」というので、「あなたには村人がいるでしょ」と返すと、「村人とはなあ……最初は良かったんだ。あいつらもあたしを頼ってくれて。でも、それが子になり、孫になり、をすると、どうしても序列ができちまうんだね。あたしは、あんたみたいに馬鹿正直な馬鹿が好きなんだ」と、ストレートの背中まである髪をばさり、といじりながら言いました。

「馬鹿って……それに私、別に正直なわけでもなんでもないですよ?ただ、嘘をつくだけの能力がないだけで……」と返すと、「言ったろ?馬鹿は私は大好きだ。それに、お前はなよっちい。あたしの力が欲しくはないか?ん?」と片眉を上げます。

「……なんだか、式神にするまで帰らないつもりでしょうけどね?」と言うと、「そのつもりだよ。式神にするまで何時間でもあんたの邪魔をし続けてやるさ」「おい、私の仕事は……」と、アラハバキ様がため息混じりにツッコミます。
 私は、後ろの真理矢を振り返りました。すると、真理矢は不承不承といった雰囲気でこくりと首を縦に振ります。

「……わかりました。わかりましたよ。あなたを式神にします」と、私が宣言すると、鬼は「さっすがかみな!あたしの見込んだ人間だ!」と嬉しそうに叫んで、椅子をがたんと倒すと、向かいの椅子に座る私の膝の上に乗って、ぎゅーっと抱きしめてきます。こ、この鬼、外見はスレンダーなのに、おっぱいは大きい……だと?うらやましいんだが。

「ああ、ああ、わかった。それなら、早速儀式に入ろう。かみな、儀式の流れは一通りわかっているだろうが、お前がするのはこの紙にこの鬼の名を付けてやることだけだ。さっさと終わらせるぞ」と言われ、私は髪とペンを渡され、名付けに悩みます。
 すると、鬼がひょいと私の手元をのぞき込んで、「ああ、あたしの名前か。あたしはこうだな」と言って、指で空間に文字を書いてみせます。……茨?

「あなた、ひょっとして、あの茨さんじゃないですよね?嫌ですよ、私、そんなメジャーな鬼を式神にするなんて。毎日緊張しっぱなしじゃないですか」と後ずさると、「どの茨かはわからんが、あたしは茨だよ。昔からね。それに、メジャーってほどでもないと思うが」と、私の膝から降りたままで、頭をこりこりと掻いてみせます。

「それに、鬼を式神にするやり方は、昔からある。そう珍しいことでもないさ。さ、書いた書いた」と言われ、私はペンで「茨」と書いてアラハバキ様に渡します。
「うむ……まあ、苦労もあろうが、たくましく生きろよ」とアラハバキ様に言われ、「じゃあ助けてくださいよ!あの鬼、なんとか説得してくださいよ!あなた、まつろわぬ民の総まとめ役でしょ!?」と言います。
「いや……鬼は無理だ。奴らは、そもそもこうと決めたら話を聞かんからな……私もこれでもなんとかやっているんだ。わかれ」と言われ、私は「うぐぐ……」と詰まります。

 儀式自体は、以前と変わりません。剣で紙を突き刺して、なにかの呪文を唱えて、何かが私の中に入り込んで……。
 で、私はついに鬼の主となってしまいました。

「では、私はこれで。仲良くやれよ」と、アラハバキ様は去って行きました。
「……茨さん」「茨でいいよ。敬語もなしだ。今日からあんたがあたしの主なんだろ?」と言われ、「じゃあ、茨。ちょっとパンとコーヒー牛乳買ってこいや」と、私は嫌がらせのつもりでびしっと親指を立てます。
 うまく怒らせて契約を破棄させるのが狙いでしたが、「あ、パンとコーヒー牛乳だね。パンと言っても色々あるからねえ。何のパンがいい?」と普通に返され、「え……えっと。じゃあ、ミルクフランス……」というと、「オッケー!じゃあ、ひとっ走り行ってくるよ!」と言って嵐のように去って行きました。

「……姉様、僕は姉様が望むようにするつもりですが……今回は……」と真理矢が言うので、「いや、いいよ。真理矢のせいじゃないない。……それに、一応嫌だって言ってるけど、私、本当はそんなに嫌じゃないし」と打ち明けます。
「嫌……ではないのですか?」と聞かれるので、「うーん、なんか、茨って、底抜けに明るいじゃん?だから、鬱気質の私は、なんとなくそれで励まされてる気がするし。赤毛と同じで、こっちが本音を言っても平気で返してくるしね。気の置けない友達が一人できたって感じで私は好きかな……」「姉様……僕は……」と、真理矢がそっと私の顎に手を掛けた時、「ただいま!」と茨が帰ってきました。

「はえーよ!もっと余韻に浸らせろよ!」「え?何?お楽しみだった?ぐふふ、お楽しみだった?」「茨、あなたもう帰ってください」
 ……ということで、鬼の式神ができましたよ。
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