サーシャの手作りケーキ | 黒い羊のみる夢
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サーシャの手作りケーキ

 ちょっと整理したのですが、私の使う術は、西洋魔術より東洋魔術と言った方がいいのかもしれません。
 そもそも、ヘミシンク自体が西洋魔術の類いにはいるじゃないか、というところですが、私の周りでは、神様や上の存在……ガブリエルさんは取っておきますが、ほとんどが東洋の、しかも日本の土着神の神様方です。

 でも、術の発動からすると、西洋魔術なのかなあ……?ちょっとここらへん混乱中ですが。

 まあ、西洋魔術は、魔女を基準にした魔術で、東洋魔術は陰陽師から派生した魔術ですが。

 そんなことを考えていたら、「お茶が入ったわよ」とサーシャがワゴンを押してきました。
「今日は冷えるから、あえてチャイにしてみたわ。シナモンでさらに保温性抜群!」とサーシャは胸を張ってみせます。
「チャイって、インドの貧困層からできたお茶なんだけど……吸血鬼のあなたも知ってるんだね」というと、「私はこれでも庶民派吸血鬼よ?お嬢様だからといってバカにしないでほしいわね」と言われてしまいます。

「その……ケーキもあるんだけど……」ともじもじしていますが、私は「いただくわ」と言います。
「姉様!?また以前のように倒れたら……!」と言いますが、「今日は大丈夫。姫に人間用って確認したし」と若干自信なさげにサーシャは言ってみせます。

 やがて、ホールケーキをそのまま焼いただけの、イングリッシュ風の素朴なケーキが出てきます。
 私、こういうケーキ好きなんですよね。スポンジケーキってあんまり好きじゃなくて……。「赤毛のアン」をよく読んでいたからかな?アンの世界に出てくる料理やお菓子がとにかく美味しそうで、「こけもも」とか「木イチゴ」とかに憧れを抱いています。
 ……まあ、大人になってから実際買ってみたら、あんまり美味しくなかったんですけど。だからケーキに入れてアクセントにしたり、シロップをかけたりするのかな?

 今日は、メローネも卓を囲みます。そういえば、メローネ、意外と甘党だったんだっけ。忘れてたよ。

「でさー、メローネ、浮気してない?」とわざと動揺させるような話題を振ると、ふん、と鼻を鳴らして「そうしたらお前も気づくだろ。他の女の気配が消えてないということだからな」と言われます。
「真理矢……は、心配ないし。メローネ、最近仕事仕事で館にいなかったから、ちょっと心配したよ」というと、「……待て。本当に仕事だ」と、ちょっと弱った感じで頭を掻きます。

「ん、このケーキ美味しい。ベイクドチーズケーキっぽい」とケーキの感想を言うと、「チーズを入れてみたんだけど……」とサーシャがもじもじしてみせます。

「?……もしかして、サーシャ、これ、サーシャが焼いたの?」とニヤニヤしながら聞くと、「……クリームとかをホイップするのは苦手だけど、こういう焼き菓子なら、基本的に混ぜて焼くだけだから簡単なの」と白状します。
「い、いいから食べてよね。ちゃんと姫に教わって、人間用に作ったんだから」とツンデレるので、「はいはい」と言ってフォークを動かします。

「人って、一つくらいは取り柄があるのですね」と真理矢がぽつりと言うと、「何よそれ!私は他にも色々と便利なんだから!」と十徳ナイフの説明文みたいなことを言い出します。
「たとえば、この館を襲ってきた輩には、無数のコウモリの姿になって、頸動脈を切ることができるわ。他にも、驚かせて逃がす方法もあるし。私がいて便利なこともあるからね」と真理矢のそっぽを向きます。

「まあまあ、真理矢もサーシャも。せっかくのお茶会なんだから打ち解けようよ」と私が仲裁すると、真理矢は「はあ……」と納得のいかない表情。
 ……しかし、このメンバーでお茶会するのも無茶だったかも。真理矢とメローネは恋敵だし、サーシャはまだ新人で、館のことをよくわかってない。それに、勝ち気な性格だからなあ……。もう一人、仲裁役がほしいところ。

「そういえば、サーシャは吸血鬼の幽霊なんでしょ?何ができなくて、なにができるの?」と聞くと、「そうね……生前苦手だったものは、特にもう苦手意識はないわ。でも、血を吸うこともない。戦闘も、多少はできるけど……。でも、悪いことといったら、そうね。時々、頭がぼんやりして、自分がなんなのか思い出せないことがあるの。多分、幽霊になってるからだろうけど」
 そう言われ、私は「なんだ、じゃあ死んで得することばかりじゃない」と言いました。
「そうかしら?以前、鏡に向かって『お前は誰だ』というと発狂するって話をきいたことあるけど、自分が自分でない感覚って結構きついわよ。……あんたにはわからないかしら」と、サーシャは少し寂しそうに言います。

「うん、サーシャ、ごめんね。お茶もケーキも美味しいよ」と言うと、ぱっとサーシャの後ろの翼が動きます。
「私が用意したんだから当たり前でしょ」と言いつつ、翼はふりふりと動いています。……犬の尻尾みたいな?

 お茶会、すっかりサーシャに任せっきりになってるなあ。でもまあ、いいか。と思ってしまう私です。
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