リリーの妹さんが来た! | 魔法石の庭3rd

リリーの妹さんが来た!

 今日の夕方、ちょっと降りてくる……つもりだったのですが、結構な大事がありまして、急遽2時間ほど潜ってきました。

 始まりは、とある客人からでした。
「かみなに客人よ」と言われ、誰だろう?と思って「通して」と言ったところ、幼い10代前半くらいの女の子……服はぼろぼろで、長い旅をしてきたのがわかる子が来ました。

「あの……?」と用件を聞こうとすると、「お姉ちゃん、いるんでしょ?会わせて」と言ってきました。
 フードを被っているので、よくは見えないのですが、赤い瞳がぎらぎらしています。

 うちに赤い瞳の子といえば、アイア……?と思って、「アイアなら、ほら、ここに」と左手を差し出すと、「違う!リリーお姉ちゃんよ!」と叫ぶように言いますが、いかんせん華奢な体つきなので、かすれた声しか出ません。
「あー、リリーは、今、ここにはいないんだよねえ」と言うと、「じゃあどこにいるの?知ってるんでしょ?会わせて!」と言ってきます。

 仕方なく、話を聞いていたメローネと真理矢に視線を送って、ユフィさんのお城に向かうことにします。
 しかし、「じゃあ行こう」と手を繋ごうとした途端、私の手をパン、と叩いて、「結構よ!自分で飛べる!」と言って、背中から悪魔のような羽を出して飛び出します。
 ……でも、すぐに「……どっちの方向?」と気まずそうに言ってきます。なので、私たちが先に飛んで、後からリリーの妹さんがついてくる形になりました。

 確か、リリーの寝言で、「サーシャ」と言っていたような……?と思いつつ、フォーカスのラインをくぐり抜けて、ユフィさんの新しい水晶のお城に到着します。
 ノックをすると、ちょうどリリーが「はい?」と出てきます。
 すると、「お姉ちゃん!」とサーシャさんが抱きつきました。

「さ、サーシャ?本物なの!?」とリリーがサーシャさんの顔をのぞき込みます。
「私、幽霊になったけど、思い出したの!お姉ちゃん、会いたかった……!」と言って、サーシャさんはリリーと抱き合います。フードの下の髪はリリーと同じく銀髪で、腰の辺りまで長く伸びています。

「あ……でも、私、今は……」とリリーがちょっと言いにくそうに言います。紅星石さんとのことでしょう。
「何?お姉ちゃん、嬉しくないの?さあ、こんなところにいないで、帰ろう?家はないけど、お姉ちゃんとなら平気」とサーシャさんが手を伸ばしましたが、リリーは黙って首を振りました。
「お姉ちゃん……?」とサーシャさんが言うと、リリーは「ごめん……私には今、好きな人がいて……その人と住んでるの」と訳を話しましたが、サーシャさんの瞳にみるみるうちに涙がたまり、「お姉ちゃんのバカ!」と言って飛び出してしまいました。

「真理矢、追って。引き留めておいて」と私は真理矢に命ずると、リリーに「良かったら、妹さんのお世話は私たちがする。リリーは、時々会いに来たらいいわ」とリリーに言います。「……お願いします。私は今、ここを離れられませんので」とリリーが言いました。

 私とメローネは空を飛ぶと、真理矢にがっちり腕を掴まれているサーシャさんに言います。
「サーシャさん、とりあえずうちの館に来て、お風呂に入って、汚れを落とそう?服も洗わないと。それから話をしよう?」と言って、半ば強引に館に来る承諾を得ました。

「そういえば、吸血鬼に流水ってだめなんだっけ……?」とつぶやくと、サーシャさんは「問題ないわ」と返します。「?」と思っていると、「私は、吸血鬼だけど死んでる。だから、もう死ぬことはない」とぽつりとつぶやきました。

 館に着いてから、サーシャさんにお風呂に入るように言って、洗濯物を洗濯機に放り込みました。
 その間にと、首にファーの付いたパジャマを創造してあげます。
「サーシャさん、ここに着替え置いておくね」と言うと、返事はないものの、ガラス戸の向こうで微かにうなずく気配がありました。

 お風呂から出てきたサーシャさんがとてとてと応接間に出てくると、銀の髪と赤い瞳がさらに美しい、美少女がそこにいました。
「うん、似合ってる。紅茶が入ってるから、飲んで」と言うと、サーシャさんは黙ってカップを受け取りましたが……それを、私に向かって投げてきました。幸い、私にはかかりませんでしたが、真理矢とメローネが一度に立ち上がります。しかし、私は見てしまったのです。紅茶を投げた後の「あっ……」というサーシャさんの表情を。

「メローネ、大丈夫。真理矢は、カップが割れちゃったから片付けて」と言うと、サーシャさんがばたばたと応接室から出て行きます。

 私はそれを追って、玄関まで出ます。すると、サーシャさんが玄関に腰掛けて、腕で顔を覆ってうずくまっている姿がありました。
「サーシャさん……」と声を掛けると、びくっと彼女は反応し、おそるおそる私を見上げました。
 私も玄関に腰を下ろすと、そっと彼女に手を伸ばした……のですが、「嫌!」とそれをはねのけて、そしてすぐにまた「あっ」という顔をして、縮こまりました。

「ごめんなさい、ごめんなさい。もうわがまま言わないわ。だからぶたないで。もう殺さないで。お願い……」
 最後は、涙声です。私は、彼女が虐待を受けていたのでは?と勘ぐりました。虐待を受けていた子は、サーシャさんのように、助けてくれる人を試すのです。
「大丈夫。ここにはあなたを傷つけようとする人はいない」と、私は彼女を抱きしめました。「……ねえ、サーシャさん。私たちの屋敷に住まない?部屋なら余ってるし、気に入らないならいつでも出て行っていい。今決断しなくても、とりあえず今日はここなら雨風しのげるから、泊まっていったら?」と言うと、サーシャさんはぎゅっと私のドレスを掴んで、「……サーシャ」
「ん?」「サーシャでいいわ」と返事をしました。

「わかった。サーシャ。とりあえず、服を乾かして、繕ってから先のことを考えれば良い。私たちは、あなたの味方だから。ね?」というと、「……お姉ちゃんは、私のこと邪魔なのかな?」とぽつりと言うので、「そんなわけない。でも、人間でも妖怪でも、いつかは肉親と別れる時が来る。巣立つ、っていうのかな?リリーは、サーシャのお姉ちゃんだから、先に巣立ったんだよ。サーシャも、巣立つ時がきっと来る。それまで、この屋敷に住んでも良いんじゃない?とりあえず、その天の邪鬼さんをどうにかしようね」と、頬を突くと、「っ、別に天の邪鬼なんかじゃ……」とそっぽを向きます。

「じゃあ、戻ろう。ここは寒いし。館の中は暖かいよ」と言って、私が手をさしのべると、今度は振り払わず、そっとその手を掴んできました。
 
 そんなこんなで、また館に住人が増えたのです。
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コメント

リリーさんに妹が居たとブログで以前拝見してましたが、まさか幽霊として現れるとは(向こうは何があっても不思議ではない所がまたアレなんですがwww)。
リリーさんとの涙のご対面と思いきや、既にお姉さんには好きな人が。しかも右川様宅でもこれから色々と(悪気が無かったにしろ)トラブルが―……って、サーシャさんも大変な人生(?)を歩みそうな予感ですね……。右川様、お疲れ様です。m(__)m

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