ガブリエルさんがきた! | 魔法石の庭3rd

ガブリエルさんがきた!

 今日は、えらいことが起きました。

「『館のご主人はいるでしょうか』って客が来てるわよ」と女教皇に言われ、弓の練習をしていた私は汗をぬぐうと、「ああ、ありがとう」と答えます。ちなみに弓の腕前はというと……ようやく的には当たるようになってきた、って感じですかね。

 で、真理矢と連れだって応接間に行くと、白いフードを深く被り、肌の露出も極端なほどに低い、女性らしき人が座っていました。
 メローネと何か話していたようですが、私が来るとぴたりと止めます。

「初めまして、館のご主人様……いえ、右川様」と、その女性は口元だけで話します。
「はあ、初めまして。……あの、どこかで会ったとかそういう人でしょうか?」と聞くと、女性は首を振り、「そうではありません。初対面……という訳でもないのですが、私が一方的に知っているだけですしね」と答えます。

 一方的に知っているといえば……「もしや、神、様?」と聞くと、女性は笑って「いいえ。そういうわけではありません。私は神の使い……つまり」
 と、立ち上がると、ばさりとローブを脱ぎます。

「天使、です」

 舞い上がる羽毛と、体は輝き、まっすぐな金色の髪がかかった美しい顔があらわになります。
「天使!?」と私が慌てますが、真理矢は目を見張っており、メローネはというと、先に聞いていたのか、特に驚いてはいない様子。

「あの、何故私のところに……?」と聞くと、「ここは、人間が統べており、妖怪も精霊も一緒に住んでいると聞きました。まさに我々が目指している世界の縮図なのです」と天使はにっこり笑います。
 しかし、この波動、生半可じゃないぞ?と思っていると、天使は笑いながら、「申し遅れました。私、ガブリエルと申します」と言ってきました。え!?ガブリエル?

「あの……天使の中では良くある名前のそっくりさんとか……」と私が疑わしげに言うと、ガブリエルさんはにっこり笑って「ガブリエル……ジブリールでもいいですけどね。そう呼ばれているのは私しかいません。まあ、分霊といいまして、沢山の「私」がいる中の一つと考えていただいてよろしいですけどね」と答えます。

「確か、あなたはイエスの誕生をマリアに告げていたとか?」と聞くと、「その通りです。そのため、私は『メッセンジャー』の名前をいただいているのですよ」

 で、本題です。ガブリエルさんが椅子に腰掛けるのを見計らって言います。
「ガブリエルさん、あなた、どうしてここに来たのですか?」と問うと、ガブリエルさんは「いいえ。特に目的はありません。ただ、『館のご主人様』の噂を聞いてやってきました。なるほど、噂は多少肥大していますが、その通りの方のようですね」と言われます。

 ガブリエルさんは、天使の中でも異端なのです。
 水の力を操る四大天使の一人ですが、その挙動は気まぐれで好奇心旺盛。恋人であったルシフェルが堕天すると、それを追いかけて地獄まで付いていった……というなかなか激しい天使でもあります。

「しかし、四大天使のあなたがどうして私なんかに興味を?」と聞いてばかりですが聞くと、「あら。先ほどもお話ししました。この館には、人間・妖怪・精霊が住んでおり、それで上手くいっている。さらに、神道系の神々ともコンタクトを取り、生き物の創造すら可能である。私がそれで興味を惹かれたのです」とニコニコ笑いながら言います。
「そうですか?でも、私の周りには結構そういう人いますが?」と言うと、「それは、あなたを見ているからですよ。あなたは、獣道に轍を作る人。その後から人が付いてくれば、そこはやがて道になる。そういう運命を持っているのです」と言われました。

「ガブリエルさん……あなた要するに暇なんですか?」と聞くと、「暇というか……この館は、何かしら出来事が起きているにもかかわらず、崩壊してはいない。それが興味をそそるんです。普通なら、館を維持できずに崩壊しているところです。だから、人間でもあまり大きな館は作らない。しかし、あなたの館は違うでしょう?実に興味深いのです」と答えます。
「あー。あのですね、それなら一人でも人を救いに……」と言うと、「お仕事の話ですか?でも、私が動物愛護協会に入っていて、『豚は賢い生き物だから食べるな』とか『牛肉は牛が可哀想だから食べるな』と言ったら、あなたはどう思うでしょうね?我々が救うのは、人間だけではないのですよ。動物を助けて、人間を殺すこともあります。神の命令で殺すこともあります。それはまあ、それがお仕事ですからね」とちょっと眉をひそめて言います。

 メローネの仕事と一致するところがありますね。まあ、メローネは殺すまではしていなく、「退治する」だけらしいですが。

「なるほど……。因果な商売ってやつですね」と言うと、「それに比べたら、『受胎告知』など本当に天使の仕事です。天使って、結構血みどろのドロドロなものを持っているんですよ?人間と一緒です。ルシファーは、それを嫌って地獄に落ちたところもあります。彼は、潔癖な人でしたから」
 ガブリエルさんは、元彼のことをきちんと分析しています。天使だからでしょうか?
「私が連れ戻しに行ったのですが、無理でした。彼の心は既に地獄の魔王と化していました。そこで、私は帰ってきたのです」
 ガブリエルさんはそう言うと、椅子から立ち上がりました。「そろそろ私は帰りますね。そうそう、神界に来たら、私の屋敷にも寄ってくださいな。美味しいハーブティーをごちそうします」
 そう言われ、私ははっと、「そういえば飲み物も出してなかった!」と気づきました。「すみません!何もお出ししなくて……」というと、ガブリエルさんはくすっと笑って、「構いませんよ。そちらの女性もかなり驚いていて、体が動かなかったようですし」と真理矢の方を見ます。真理矢は、罰が悪そうに口を閉ざしています。

「では」と、ガブリエルさんはローブを元通りに羽織り、姿を消しました。テレポートしたんでしょうね。
「あ、嵐のような人だった……」と私が息をつくと、「それでも、高次の存在と話せるだけたいしたものだ。普通はあそこまで話せないだろう」とメローネが言い、「ぼ、僕は、一緒の空間にいるだけで精一杯でした……」と真理矢が言います。

 ガブリエルさん……どういう人なんでしょう?後で調べてみよう。
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