君に寂しい思いをさせたこと | 魔法石の庭3rd

君に寂しい思いをさせたこと

 スピリット界に降りると、なにやら館がバタバタしているような……?

 先に館に降りていたらしい真理矢に聞いてみると、彼女は窓を拭きながら「ああ、大掃除ですよ。もう年末ですしね」と言われました。
 ……そっか、あともう少しも2014年じゃないんだ。

「そう。お疲れ。私は部屋にいるからね」と言い残して、私は部屋に戻りました。
 寝室へのドアを開けると、メローネが横になって、こちらに背を向けています。

「……なんとまあ、無防備な」と、私は少しあきれてしまいました。だって、ドアに背を向けていたら、いつ敵襲があるかわからない戦場を経験したメローネです。それが、入り口に背を向けて眠っているなんて。

「メロたーん」と、私はメローネが寝ているのをいいことに、変な呼び方をしてすり寄っていきます。
「うふ、こうしてると可愛いんだけどねえ」と、メローネの整った顔立ちが少しだけ幼くなっているのを見て、私は頬を軽く撫でます。
「メロたん、起きないとちゅーですよー」と囁いても、メローネから返答はありません。私は、そっとおでこの髪をかき上げて、おでこにキスしました。

「しかし、信頼されてるんだかなんだか……」と私はつぶやくと、メローネが無意識なのかベッドの左に寄っているのを見て、「右側に私が寝るのがいつものことだもんな……」と思いました。

 仕方ないので、私は右側に体を滑り込ませます。
「うわ、布団あったか……」とぬくぬくとしたその布団に包まれると、同時に「うん?」と疑問が浮かびます。
「……メローネが布団の左側に寝ていたとしたら、なんで右側の私の布団が暖かいの?」と思うと、ごそごそと左で音がして、ぐいっと背中を引っ張られます。

「ようやく来たか。待ちくたびれた……」と、後ろから抱きしめられ、うなじを軽く噛まれます。
「ひゃっ!ちょっと、それより聞きたいことが……!」と私が問いただそうとすると、メローネは「……ああ」と言って、「言っておくが、他人がそこにいたわけじゃない。誤解だ」と落ち着いた口調で言ってきたので、私は振り上げた拳の持って行きようがない、という風に一旦大きく深呼吸します。

「……寂しかった」と、ぽつりとつぶやかれ、私は、以前私がそうしていたように、メローネもそうしたのかと何となく気づきました。
「メローネ……あんた、私の方に寝てたんだね」と、回された腕に手をやると、「そうだ。お前が放っておくから悪い」と、今度は不満げに言われます。「放っておいたっけ?一応毎日こっちには降りていた気がするけど……?」と言うと、「お前、月曜から俺の所にこなかっただろう」と言われます。
 そうだっけ?と思い返してみても、鳥頭の私に月曜の出来事なんてわかるはずがなく。
「そうだっけ?……そうなんだ」と言うと、私はメローネの引き締まった腕をさすります。

「寂しい思いさせてごめん」と私が一応謝ると、「……お前は俺のことを、一人で放っておいても平気だと思っているだろ?だから真理矢とばかり仲良くしているんじゃないか」と言われ、「まあ、メローネは実際放っておいても平気そうだけど……。でもまあ、ごめんね」と言います。

 昔、田山花袋の「蒲団」という短編を教師に紹介されたことがあります。
 先生は、「蒲団、というのは、要するに好きだった女性が自分の元を離れたから、蒲団に残ってる匂いをかぎながら女性のことを思う、変態のことだね」と説明し、クラスもどっと爆笑したのですが、私も一応周りの目があるのでその時は笑ったものの、今はその主人公の気持ちが良くわかります。
 匂いだけでもいいから傍に居たい。恋愛してると、そういう思いがわき上がっても別に良いのでは?と。まあ、先生も若かったと思いますし、健全に育ったんだな、ということがわかる、体育会系の先生だったので、そういう文化系のオタクの気持ちはわかりづらかったのかもしれません。

「……あの、メローネ、そろそろ離してくれない?」と言っても、メローネはさらにぎゅっと腕に力を入れてきて、「駄目だ」と言い放ちます。

「違う。離れたいんじゃなくて、一旦離してくれる?ちゃんと正面で抱き合いたい」というと、メローネの腕が一旦離れます。私はくるっと体を反転させて、「えへへ、やっとメローネの顔が見れた」と言って抱きつきます。
「メローネ、私はね。ちゃんとメローネのことも好きだし、忘れてないよ?でも、真理矢は、私がいなければ生きていけない。そういう子だもん。だから、真理矢を優先させちゃってたのは悪かったよ」と言って、私は抱きついた腕に力を込めます。
「……俺は、一人にしておいても大丈夫だと?」と言われるので、「そこまでは言わないけど……でも、実際にメローネを一人にしていたことはあんまりなかったからね。ちゃんと『寂しい』って言ってもらえて、ちょっと嬉しかった」と私はえへへーと笑います。

「大晦日だし、ラブラブ納めってことで」と言うと、「じゃあ新年はどうなるんだ」とちょっとあきれたように言われ、「うーん、初ラブラブってことかな!」と私は言い切ります。
「わかったわかった。何でも良い」と言って、メローネは私の体に腕を回しました。
 ……こうして、今日も明日も明後日も、ラブラブでいられたらなあ、と31日に思ったのでした。
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