かみなさん、弓を始める | 魔法石の庭3rd

かみなさん、弓を始める

「う~ん……」と、私は悩んでいました。
 ここはメローネや真理矢がいつも使っている道場の中。私は、新しく壁に立てかけただけの簡素な的を狙って弓を引いています。

 弓といっても、日本の長いあの弓ではなく、西洋のアーチェリーのような短い弓です。弓自体が銀色に、翼をかたどった装飾がなされています。

「当たらないなあ。弓って当たらなければ意味ないんだけど……」と思いつつ、再び弓を引きます。日本式の弓と違って、前後の動作が必要ないのが便利です。
 メローネや真理矢を見ていて、「私も自分の身を守りたい」と思って始めた弓ですが、なかなかうまくはいかないものです。

「風で無理に方向を変えたりはできるけど……それじゃ、あんまり意味ないような気がするからなあ」と思って、弓を引き、放ちます。ドン!と以外と重い音と共に、カラン、と薄い板が割れる音がしました。
「あちゃ、割れた。ちょっと根を詰めすぎたか……」と、私は割れた板を処理して、次の板を創造します。

「ふい~……休憩」と道場の畳の上に座ると、私の方をちらちら気にしながら稽古していた真理矢が、「姉様、どうぞ」とすぐに温かく蒸したタオルを持ってきてくれます。
「ありがとう。あー、あったかい……」と言うと、「姉様も、あまり根を詰めないようにしてください。……僕に言われるのもなんだと思いますが」と真理矢が言うので、「平気平気。ああ、でも、指が痛くなっちゃった……。ブレイサー(弓を射る時の手袋)してたのになあ」とブレイサーを取ると、人差し指と中指の間が赤くなっています。これは、マメができるのも時間の問題かも……。

「姉様は、確か鉄扇と銃をお持ちではないのですか?鉄扇は実戦に向いているとは言えませんが、銃があるので、それで構わないのでは?」と真理矢が言うので、「うーん……頑張ってる真理矢を見ていたら、私も武道がやりたくなってね。それにほら、真理矢の『矢』にも繋がるじゃない」というと、真理矢は「そ、そうですか……」と、少し照れている様子。
「それにしても、あんまり的に当たらないの。私、不器用だからかな?」と言うと、真理矢が構えた私に覆い被さるようにして、弓を握っている手を握ります。

「弓の軌道は、弧を描くのです。だから、対象の少し上を狙って……1、2、3で放ちますよ?1、2、3!」と言って、放つと的の中心に見事に当たります。
「おお、すごい!そうか……ちょっと上を狙うんだ」と言って、私は矢を取ります。この感覚を忘れないうちに、自分でもやっておきたい。

「まあ、姉様なら、人間ですから、物理法則などないこの世界では、簡単に弓など当てられるのでは?」と真理矢が言ってくるので、「そういうチートはあんまり使いたくないんだよねえ……本当に戦闘になったら、そんなこと言ってられないから風でも氷でも使うけど。でも、何か一つ、趣味の武道を持っておくのもいいかなって。弓って今は銃が主流の時代で、ほとんどロマン武器じゃない?だからやってみたんだけど」と言って、私は構えて、放ちます。
 すると、一応的には当たるようになりました。「おお、当たった。すごいすごい」と言うと、「……僕としては、何故姉様がそのチートを使わないかがわからないのですが」と言われるので、「趣味の世界でチート使ったらつまらないでしょ?少しうまくいかない程度が良いんだよ。何も実戦で今すぐ使わなきゃならないわけじゃないし。現実だと、お金かかるけど、スピリット界だと0円でできちゃうし!」と説明します。

「……だからアーチェリーですか。ボウガンなら自動で操れるので何となくわかるのですが、何故弓なのかがわからなかったのですよ……」と真理矢が言うので、「うん。それに、上達したら実戦にも使えるでしょ?銃が主な社会だって、灯星石さんなんかは剣で銃と戦えるじゃない?ここ、スピリット界は何でもありの世界なんだから、弓で戦おうとしても、銃より使えたりもするかもね」と答えます。

「僕も、あえてランスという武器を選んだ訳ですが、そういった意図があったんですね」と真理矢が感心したように言うので、「うーん、意図っていうか……てか、真理矢、私が何か始めると、そこに何らかの企みみたいなものがあるのが当然だと思ってない?」とじろりと睨むと、真理矢は慌てて「いいえ!ただ、姉様は何かをするときはちゃんと何かを考えていることが多いので、聞いてみただけです」とぱたぱたと両手を振ってみせます。

「まあ、腹黒でもいいけどね。……しかし、こうなるとスコープとか欲しくなるなあ。狙撃兵!みたいな」と私が言うので、「はあ……しかし、姉様、スコープだと重くなりますよ?」と言ってきます。……だからスコープ作らないんだけど。

「弓は、ずっと前、ネットゲームで操ってたキャラが主に使ってたんだけど……だから簡単そうに見えたんだよねえ、夢の中でも何回か使ったことあったし。でも、あんまり簡単じゃなかったかな」と言って、構え、放ちます。これは外れ。ちぇ。

「では、僕も訓練に戻りますね」と真理矢が立ち上がったので、「うん、頑張って」と言って、私も弓の練習を再開しました。
 黙々と何かをするって楽しいですね。
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