人魚の神様と恋バナ | 魔法石の庭3rd

人魚の神様と恋バナ

 ぱしゃ、ぱしゃ、と、魚の跳ねる音と、青い魚が泳ぐ姿が見えました。

 私がスピリット界に降りると、そこは湖のほとりでした。何故館スタートじゃないの?と思いつつ、横になっていた体を起こして、ふらふらと体はどこかに勝手に行こうとしています。どこに行くんだろう……?と思っていると、湖の中の小島に、青い髪の女性が美しい声で歌を歌っています。

「呼ぶ声は一瞬で悲しみに変わるだけ こんなにも醜い私をこんなにも証明するだけ、でも必要として あなたに触れない私なら ないのと同じだから」
 どうやら、鬼束ちひろの「流星群」のサビのようです。その声を聞くと、ずきっと心が痛みました。あまりにも、私の心境と似ているので。

「……あら。こんばんは、いい夜ね」と、彼女が振り返ります。うっ……なんて美しい姿。まつげびしばしの大きな瞳に、整った造作の顔、そして、淡いピンクのドレスが彼女の美しさを際立たせています。

 そう、夜なのに、彼女の姿だけははっきりと知覚できるのです。しかし、彼女は一つ、普通の人間と違うところがありました。……二手に分かれたその足が、魚なのです。確か、昔、幽々白書で、「ツインテールマーメイド」という人魚の一種がいたような。
 
 人魚は、足を湖に浸しながら、パシャパシャと水を蹴って遊んでいます。
「うふふ。驚いてるのね。でも、日本にも人魚信仰はあるのよ」と言って、人魚は笑います。日本人なんだ……。
「×××や×××(多分、神獣と薔薇のこと)とばかり遊んでて、ずるいじゃないの。私だって人間と遊びたいのに」と、人魚はそう言って腕を組んで、精一杯に「怒ってるぞ」アピールをします。「はあ、すみません……」と私はなんとなく謝り、それから、「え?それじゃあ、あなたも『まつろわぬ民』の一柱なんですか?」と聞きます。

「そうよ。まあ、あなたの産まれたところは、川の近くだから、いつも遊びに行くのに苦労したのよ。でも、一応私は水神をやっていたわ」と言って、人魚は胸を張ります。水神……そうか、今朝、私がまぶたの裏に魚の画を見たのは、この神がやったのか、と。
「それほどの美貌なら、伝説くらい伝わっているのでは?」と聞くと、彼女は途端に機嫌が悪くなり、「河童のやつらに追い出されたのよ。まあ、やつらも伝説は調べないとわからない程度にしか知られていないみたいだけど?今は、このスピリット界で自由にやってるわ」と言い返してきます。ふーむ?

「後は、大和朝廷ね。あいつら、私たち土着神を追い出して、そこに神社なんて建てちゃって。あなたも知っての通り、八幡をその土地を制圧した印として建てたのよ。なのに、あなたたち人間ときたら、土着神のことはすっかり忘れ去って、朝廷の思うつぼに、新しい神を次々と作り出しちゃって。あんまりにも失礼な態度じゃない?」
 ねえ?と言うように、人魚は首をかしげてみせます。私は、土着神を忘れていた側の人間として、「ええ、まあ……」と、曖昧に笑うしかできません。

「それより、あなた、今寂しいんでしょ?お姉さんが悩みを聞いてあげる」と、人魚は、立ったままだった私に、草の上に座るよう勧めてきます。私は、服が汚れないかと躊躇しましたが、「大丈夫よ。ここはスピリット界なんだから、汚れないと思えば汚れないのよ」と言われ、そのまま座ります。

 人魚は、ばしゃんと服ごと水の中に入り、私の正面に泳いでくると、島に肘を付いて上目遣いに見やってきます。うう……服の隙間から、胸の谷間が見えています。どこ見てるんだ、と言われるかもしれませんが、女だって見てしまいます。
 私は、今日あったことを吐露しました。メローネがいなくて寂しかったこと。何故か、涙が止まらなかったこと。彼がいなかった時に限って恋しさが募ったこと。

 人魚はふむふむ、と聞くと、「それは、ずばり恋ね」と切り捨てました。
「恋って……一応、私はメローネに恋して婚約したんですけど……」と言うと、「あのね。あなたの今までのことは、恋に恋していただけなの。それが、自分のためでなく、メローネのために結婚を決意したことで、はっきりとした恋として表面に出てきたのね」とうんうん、とうなずきながら人魚は言います。
「でも、恋なんですか?愛じゃなくて?」と聞くと、「ふふん。愛より恋の方が、実は成り立ちの歴史が古いのよ。今は、恋より愛の方が崇高、みたいに思われてるけど、愛は新参者なのね」と答えてきます。
 
「恋……そうかもしれません。実際、私、今はメローネと恋仲になった時みたいに、ドキドキするんです。まるで、彼にもう一度恋をしてるみたいに」と言うと、「それはそうよ。でも、正直辛いでしょ?」と言われ、「はい……。とても切ないんです」と答えると、「それは本当の恋だからよ。本当の恋というのは、痛みを伴う感情なの。でも、相手のためを思うと、その痛みが快感になるのね」と言われ、「そ、それってまるで私がドMみたいじゃないですか!」と叫びます。
「そう。恋はドMなのよ。痛みさえ快感になり、ちょっとしたことで舞い上がったり。まあ、Sに通じる道は、Mを極めることって言うしね。……ちなみに、言うの忘れたけど、あなたの彼氏はとっくに帰ってきてあなたを待ってるわよ」と言われ、「そんな大事なこと言い忘れないでくださいよ!」と私は慌てて戻る準備をします。

「……うん。あなたは恋の駆け引きをある程度楽しめるタイプだけど、たまには彼に真っ正面からぶつかって行ってもいいんじゃない?ちなみに、無意識のうちのあなたがメローネを送り出した時に言った言葉は、『勝つまで帰って来るな』だったからね。彼もちょっとがんばりすぎちゃったんじゃないかしら」
 人魚の言葉に、私は、「無意識の私、バカ-!そこでツンを発動しないでよ!」と思って、「じゃあ、私はこれで……」と、移動しようとします。

「またね~、かみな。絶対にまた来てね!」と言われて、私は嵐が丘に戻ったのでした……。
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コメント

幽白に人魚の話ってありましたっけ?レベルEならあった気がするけど。
Re: タイトルなし
レベルEでしたね。失礼しました「。

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