カテゴリ:愛の賛歌 (1/7) | 魔法石の庭3rd

愛の賛歌の記事 (1/7)

間違ったら引き返せる勇気を

 ひっさしぶりにメローネと会話しましたよ。

 といっても、ここ1ヶ月ほどずーっとすれ違い状態で、今日もいそいそと外出の用意をしているメローネの背中に、邪魔してはいけないと思いながらもとん、とひっつきます。

「……?どうした?」と本気でわからないような疑問系で答えるメローネ。私は、うつむいて「最近、メローネと全然話してないね。まるで、一緒に暮らしてるのに、これじゃあ妾の家みたいじゃない」と言います。
 というか、そんな女々しい自分が情けなくなって、涙がこぼれました。メローネは珍しく慌てると、「ちょっと待ってろ」と言って携帯(スマホではなかった)を取り出して、どこかに連絡をしています。
『今日は休む。休むと言ったら休むんだ』と、強引に連絡先の相手に休暇を申請しているようです。

「メローネ、仕事行ってきてよ。私は大丈夫だから」と今にもしゃくり上げそうになるのを我慢して、私は無理矢理に笑顔を作ろうとします。
「今のお前を放っておけるか。それに、馬車馬のように働かされているんだ。今日ぐらいは休みを取っても構わないだろ」と言って、メローネは強引に通話を切ると、私をぎゅっと抱きしめました。

 私より体温が高い体。耳元に鼻を寄せると、樹木のような瑞々しい香りがします。香水ではなく、メローネの香りです。

「……すまなかった」と彼が言うので、私は「何が?メローネ、何も悪いことしてないよ」と答えます。
「今のお前は……多数の者から慕われる『嵐が丘』の主で、現実世界でも真理矢と茨という式神がついている。だから、あまり俺と関わらない方が良いと思っていた。俺は、妖怪や人間を退治する……といえば聞こえは良いが、要するに金のために何かを傷つける仕事だ。そんな男はお前には合わないんじゃないか。いつか、近い未来、お前の邪魔になるんじゃないかと思っていた。だから、距離を置いたんだ」

 私は、泣くのを忘れて、目をぱちくりさせます。
「そんなことだったの?メローネは私の何なの?」と聞くと、「……一応、夫だな」と答えてきます。
 銀髪の隙間から見える耳が、ほんのりと赤く染まっているので、私は「メローネか~わいい~!」とさらにぎゅっと抱きしめます。

「可愛い私のベイビーちゃん。私にとっては、メローネの悩んでいることは『そんなこと』で済むんだよ。私は、ここでの地位も立場もなにも気にしてない。というか、障害があるほど恋は燃えるっていうじゃない?障害があったからっていって、簡単に諦められるようなのは恋とは言わないんだよ。メローネ、あなたはまだ私に恋をしてる?いざとなったら私をさらうぐらいの気力はある?」
 そう聞いてみると、メローネは「まったく、お前は人の決心を簡単に壊してくれるな……」と言って、うつむきました。耳が、さらに赤みをおびています。

「だが、お前はさらわれたら逃げ出すだろ」「うん、私はこの館も住人も好きだもん」「矛盾してないか?」「どこが?」と、言葉のキャッチボールがあさっての方向に飛びますが、その間も私たちは身を寄せ合っています。
 まるで、今まで抱き合っていないのを取り戻すかのように、私たちは抱きしめあいます。

「メローネ、お風呂入ろっか?」と、私はようやくメローネの腕の中から抜け出して言います。
「私たちはそこから始まったじゃないの。関係がこじれたのなら、もう一度、最初からやり直せばいいじゃん。どうせこの時間帯にお風呂に入る物好きもいないだろうし、一緒に入ろう?」と私は提案しました。

「……まったく」と言って、メローネはそのままドアを開けます。私は、その背中に続いて、お風呂まで付いていきました。

 人間、いつでも間違ったら最初からやり直せば良いんです。私もメローネも、いい年ですし、そりゃあ誤解があったりケンカしたりするのは当たり前。でも、その都度、話し合ったり、時には抱き合ったりしながらやっていけばいいんですよ。
 多分、リアルでの夫婦関係だって同じじゃないですかね?私はスピリットとしか結婚したことないからわかりませんが。

 ともかく、久しぶりにラブラブできたので私は満足です!
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夏の調べとは愛の言霊

 スピリット界で、私は茨の部屋にいました。

 そして、「ねえ茨。どうして私は病気になったんだろう?」と、切り込んだ話題をさらけ出します。
 すると、「遺伝だね」「え?遺伝?」「そう。遺伝だよ」と言われ、私は目を軽く見開きました。遺伝ときたか……。

「あんたのばあさんも鬱になってるだろ?今は薬を飲まなくともやっていけてるようだが……こういう精神病も、大本を辿れば遺伝なんだ。もちろん、家族の誰も発症していなくて、突然発症するやつもいるだろうさ。でも、大抵は遺伝だ」とか。

「遺伝……そうなのかな。確かに、うちも、祖母が鬱になったりしてたけど」というと、「まあ、一理あるってことだけだがね」と茨はキセルを置き、最後の煙をふうっと空中に吐き出します。

「『利己的な遺伝子』は読んだことあるかい?」と言われ、私は首を振ります。周りからは「文学少女」扱いされている私ですが、基本的にあまり専門書は読んだりしません。だって難しいんですもん……中卒の脳みそじゃ追いつきませんよ。

「そうか。まあ、簡単に言うと、『遺伝子というものは、他者より優位に立ちたがるもの。その遺伝子によって人間は全てがプログラミングされている』という感じの内容なんだが。つまり、『人間は遺伝子に操作されている』という考え方だね。確かに鬱は社会的に排除される側のものかもしれない。けれど、遺伝子の組み合わせで言うと、その苦しみや悲しみも、全部意図的なものなんだよ」

 私は、茨の言っていることがあまり理解できませんでした。私は、遺伝子に意図的に管理されている……?

「ふ。まあ、戸惑うのも無理はないさ。だが、人間なんて、ニューロンとシナプスと電気信号で動いてるんだよ?精神科の薬なんてものは、脳波を調べて、脳内の化学物質に働きかけるものだしね。ま、この話はここまでにしておくか。あまり楽しい話でもないしね」と、茨は立て膝からあぐらに変えます。

「……茨。着物でそれやられると、おパンツ見えてるけど」と言うと、「見せてんだよ。……いや、ジョークだが。でも、あんたは基本的には同性に劣情を抱くタイプの人間ではないだろ?真理矢とのことだって、あっちから熱烈に告白されて受け入れたようなものだし。ま、バイだってことは認めるがね」と屁理屈をこねられます。
「はあ。まあ、いいけど。多分、私は茨が男だってあんまり気にしないと思うし」と言うと、「まあ、そうだろうね。あんた、強引なタイプの男は好きじゃないだろ?しかしまあ、メローネは別ってやつかい」と言われます。

「そうだ。私、茨に聞きたいことが……聞きたいこと……?あれ……?」と、私は、現実世界で用意してきた問いを、すっぱり忘れ去っていました。
「ふん。忘れるってことはそうそう重要なことでもないだろ」と言われ、「ええと……まあ、そうなんだろうけど」と曖昧に相づちを打ちます。
 スピリット界であったことを思い出せないことはあっても、現実であったことを思い出せないってこともあるんですかね?よくわかりませんが。

「さて。腹が減ったね。キッチンで何かつまんでくるか」と、茨が立ち上がり、私も「じゃあ、私は真理矢のところにいるから」とそこで解散します。
「茨に聞きたかったこと……確かにあったはずなのにな。どうしてだろう?」と思いつつ、真理矢の部屋のドアを開けると、真理矢が「姉様、お待ちしていました」と、濃厚なキスをしてきます。

「真理矢……最近、こっちでもあんまり構ってあげられなくてごめん」と言うと、「まあ、姉様は色んな方と縁がありますから。そこのところはわきまえております」とまだ感触の残る唇を人差し指でなぞられます。
「しかし、姉様の夫は僕ですからね。メローネも夫ですが、今は僕だけの姉様ですよね?」と両手を握られながら言われ、私はふっと「ああ、可愛いなあ」と思って、今度は私から真理矢に口づけしました。

「……姉様」と真理矢が少し呆然とつぶやくので、「いつもは真理矢からしてもらってるから、お返し」と視線を逸らしながら言います。
「いいえ。嬉しいです。とても。……この間のお花見がありましたよね?」と、いきなり飛んだ話題に「え?ああ、うん」と戸惑いながらも返事をします。
「……あの時、桜の中で二人で話をしている姉様と姫様がとても仲が良さそうで。……半ば無理矢理引きはがしたのも、僕の醜い感情あってのことだったんです。すみませんでした」と、真理矢が頭を下げるので、「へ、平気平気。真理矢は私の夫でしょ?多少はやきもちとかもあって当然だし」と私は頬を掻きます。

「……そう。僕は、姉様にとっては、式神で、メイドで、女性で、夫。それだけの話ですよね。……ただでさえ、同性の恋愛という理解が乏しいこの世界では、それもなかなか……」というので、「ううん。真理矢は無理に考えなくていいの。男女は男女の、女性同士は女性同士の良さがあるんだよ。ビリー隊長も言っている!『バイセクシュアルでないことは、人生の半分を損しているということ』だと!」と、びしっとポーズを決めると、真理矢が「……それって、僕にも愛人を作れってことですか?」と言ってくるので、「あー……そういうのはナシの方向で」と、一応止めておきます。

 それから、キスしたり、抱き合ったりしながら、私たちは時間を過ごしました。
 性別なんて関係ない。愛する人と愛を交わせる、それが何よりも尊いことなのでしょう。
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結婚式本番!私、幸せになります!

 さて、夜になってご飯を食べた後、すぐにベッドに寝転んでスピリット界に行ってみました。

 すると、飾り付けもできていましたし、招待していた神様方も全員、人間の姿になってそろっていました。
 アラハバキ様は、都合で欠席のようでしたけどね。

「さて、始めるか」と神獣が、金髪ロングの美形の男性の姿で言うと、皆はこくりと頷きます。
「え?もしかして、私待ちでした?」と言うと、「いや。どうせ全員そろったら始めるつもりだったからな」と言われましたが、その一番最後が私だったんですが。

 私はブルーのウェディングドレスで、メローネと真理矢は白いタキシード姿です。
 良かった、ちゃんとメイクも済ませてある、と、ちょっとほっとしました。一応、女性として……ね(仕事ではいつもすっぴんですが)。

「まずは、結婚祝詞を挙げる。皆、退屈かもしれんが、この3人の新たな門出を祝いながら聞いてくれ」と神獣が回し(取り仕切り)始めます。まあ、古代の神様だったみたいだしね。

 祝詞は、案外わかりやすかったです。ただ、「カイロウドウケツ」って何?と思ったのですが、調べたら「共に白髪の生えるまで」という意味だそうです。……メローネのは……銀髪だもんね。白髪じゃないもんね。

 どこか、歌うような調子で結婚祝詞をあげた後、「次は、巫女の神楽を見てもらう。祝いの席だからな」と言われ、一応神楽も見たのですが……た、退屈!すごい失礼な感想だけど、退屈です。神楽とか能とかって、詳しく翻訳してくれる人がいないと、知識がないので「今、なんのためにこの動作をしてるの?」というのがわからないので退屈なのです。
 ああ、ニコニコみたいに、下字幕で説明してくれる人が欲しい……と思いつつ、なんとか我慢していると、隣に座っているメローネががくん、と頭を一瞬垂れたので、肘打ちして起こしておきました。気持ちはわかるけど寝るな!

 神楽が終わり、巫女さん方が退出すると、「どうだ?退屈だっただろうが、次は三三九度だからな。飲まずとも、口を付ければ良い」と言われ、メローネ・真理矢・私の順で杯を回すようです。
 しかし、私が杯を受け取ると、神獣が「なみなみと注いでやれ」と余計な茶々を入れ、ただでさえでかい杯にたっぷりと日本酒が注がれます。でも、私はあんまり日本酒って飲めないので、一応儀礼通りに口を付けましたが、まだ残っている日本酒をどうしたらいいのか迷ってしまいます。

 すると、メローネが隣から手を出し、ぐっと中の日本酒を飲みます。そして、半分ほど飲んで、真理矢の前にそれをずいっと差し出します。
 ……かみなを愛しているなら飲め、ということらしいです。真理矢も、躊躇なくそれを受け取って飲み干しました。

 神獣はそれを、一瞬とても優しい視線で見つめましたが、すぐにキリッと頬を引き締めて、「よくやった。今のように、困難な状態にあっても、3人で分け合って乗り越えていくように」と宣言します。
 神獣の視線の意味がわからなかった私ですが、あれは、そう、子供を見守る親の視線でした。
 神獣からしたら、私たちはいつまでも子供なんでしょうね。

「次は、宣言と指輪の交換を行う。新郎メローネ、指輪を交換して誓いの言葉を」
 神獣が言うと、メローネが私に自分のはめていた指輪を渡し、それをまた交換する、というややこしい動作をします。
 そして、「未来永劫、かみなを愛し、守り抜くことを誓います」と言って、指輪にキスしました。
「新郎、真理矢」
 と呼ばれると、今度は真理矢が、右手の薬指に指輪をはめてくれます。
「僕は、あまり頭が良くありません。しかし、たとえどんな傷を負ったとしても、かみな様をお守りすることを誓います」と、また指輪にキスしました。

 最後に私が、二人の手を取って、「二人は私が幸せにします!」と宣言しました。
 すると、パチパチ……とまばらに拍手が起こって、そのうちその拍手が大きくなっていきました。
 私としては、言った!言っちゃった!という感じですね。

「……よし。では最後に、誓いのキスといこう」と、神獣が言うので、「え!?やるの?」と私は少し尻込みしました。こんな、皆見てる前でキスとか、恥ずかしいから!
 なので、私はそろりそろりと簡易作りの祭壇から後ずさりし、一気にだっとそこから駆け出しました。

「新婦が逃げるな!」という赤毛の声とか、「かみな、ビビってる~ヘイヘイ!」というサーシャの声がしましたが、そんなこと言ってられません。だって恥ずかしい!
 しかし、同じ風使いの真理矢に通り道をふさがれ、「やれやれ……僕のお姫様はじゃじゃ馬ですねえ」と言うと、ズギューンと思いっきり唇にキスされます。
 そして、いつの間にか隣に移動してきたメローネに顎を掴まれ、今度も熱烈なキス。逃げたせいで、野次馬と化した赤毛やセルフィ、サーシャといった面々に思いっきり見られることになりました。

「ううう~……」と私が頭を抱えるのを、2人に連行され、「やれやれ……お前はいつも、予定外のことをしてくれる」と、神獣にディスられます。
「だが、これで式は終わりにする。後はおのおの自由にするように。以上!」と神獣が言うと、後はほとんどパーティ会場と化しました。

 神獣に、「今日はありがとうございます」と言ったところ、「何、これも、お前の守護の身となった時に覚悟していたことだからな。まあ、努々、家庭を壊さぬよう努力はしろよ」と言って、神獣はパーティの華やぎの中に溶け込んでいきました。

 私は、どうもそのままパーティに参加する気にはなれず、主役なのに一人で、道場の外にそっと抜け出しました。
 そして、アイアを呼び出します。
「ついに私も結婚指輪ということね」とアイアが言うので、「ええ。これからもよろしくお願いします」と答えます。
「ふん。まあいいけど。私は、メローネとあんたとのつながりを意味するリングだしね」と言うので、「だから、未来永劫よろしくお願いします」と重ねて頼みます。
「で?今夜、ついに捧げちゃうわけ?」とアダルトなことを言ってくるので、「……まあ、そういう約束でしたし。でも、一時抜けますよ。現実でお風呂に入らないといけませんからね。それから、ブログを更新して寝る前にまた来ます。それで初夜ですね」と私は腕を組んで、堂々と言い放ちます。

「逃げも隠れもしないってことね。良いことだわ」とアイアがクスクス笑います。
「ええ。覚・悟・完・了!ですよ。全裸で仁王立ちしてみせます」と言うと、「……そこは慎みを持たないと」と言われます。

 そんな、益体のないことを喋りながら、私たちの結婚式の夜は更けていきました。
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結婚準備編

 ちょっと早いですが……スピリット界に飛んできたら、真理矢の気配もメローネの気配もありません。
 しかし、なにやらガヤガヤしているのはわかります。ガイドたちや精霊が「手作り結婚式」にいそしんでいるようです。

 ってことは、真理矢もメローネも控え室みたいなところで待ってるのかな?と。
 あ、場所は、一応道場を一旦まっさらにして内装を変えてありました。真っ白な布が天井からいくつもぶら下がっています。

「お、かみな。主役の登場だね」と言いつつ、茨は何をしているかというと……ケーキ食ってます。おい。それ、ウェディングケーキじゃないの!?
「い、茨!あんた、新郎新婦が切り分ける前にケーキ食うなよ!」と言うと、「いいじゃん。どうせ、こういうのは習慣だからね。あたしが今食ってたって平気平気」と言われます。こいつ……。

「と、いうより、あんたらケーキ入刀なんてするのかい?」と言われ、「……そういえば、プログラムにはないかも」と返すと、「だからいいじゃないか。飾り付けの一部なんだからね」と、モリモリ食っています。そうだけどさ!食いかけのケーキを飾り付けるってのもなんかアレじゃん!

「かみな様、こちらに」と、精霊の一人が呼びに来ました。
 ついていくと、館の姫様の部屋に呼び込まれます。
 すると、姫様とセルフィが待っていて、「ドレスの用意ができてるわ」と、こっちを見ながら言います。

「ああ、そう……。ちなみに、どんなの?」と聞いて見ると、「じゃーん!」と部屋の半分を覆っていた白いカーテンをまくってみせます。

 そこには、上はアオザイのような上品で清楚な感じ、スカート部分は申し訳程度のフリルとマーメイドラインの足が見える感じのドレスがありました。
 セルフィがいたので、内心「ゴスロリ風ドレスとか用意されたらどうしよう?」と思っていたのですが、全体的に清楚でシンプルな構成だったので安心しました。

 色は、薄い青。私が青が好きなので、そうなったのかもしれません。
 しかし、腰の部分に大きなリボンが巻いてあり、これはセルフィが多分譲らなかったんだと思います。
 ベールと靴もセットで、靴は白い、革製のヒールの高い靴で、ちょっとだけ厚底。私が靴を検分していると、セルフィが「マーメイドラインって、足が綺麗じゃないと太って見えるでしょ?あなたは足が綺麗なんだから、見せないとね。それと、靴も厚底でヒールの高いの履くから、もっと足が綺麗に見えるでしょ?」と説明します。

「さあ、着てみてくださいな。私が夢にまで見たかみなの花嫁衣装。……残念ながら、現実の親御さんたちには見せられませんが、まあ、それは現実で頑張ればいいとして……きっと美しくなりますよ」
 姫様にそう言われ、女3人でキャーキャー言いながらドレスの着付けを始めます。
 よく見たら、ドレスの裾にもフリルが。これも、セルフィの譲れないところだったんでしょうかね。

「メイクも。かみなは清楚系なのですから、あまり厚塗りはしませんよ」「あら、メイクぐらいはバシバシやっちゃっていいんじゃないかしら」「ダメです」「なんでよ?」
 と、2人がもめはじめたので、女性がもめている時は大人しく鎮火を待った方が良いと経験でわかっている私は大人しくしていました。

 で、「あまり派手にならず、清楚を活かすメイク」に落ち着いたようです。
「……というか、セルフィってあんまり厚化粧じゃないじゃん。どうして私にはそこまで厚くしたいわけ?」と聞くと、「かみなの顔は地味だから」「……」と、私は黙ってしまいます。ええ、ええ。地味で悪かったですね。高い鼻も奥目でもないですよ。

「日本人の顔には日本人の美しさがあるんですよ。メローネさんも真理矢ちゃんも、かみなの素顔がいいんでしょうから、変に化粧で変えようとしなくていいんです」と言いつつ、姫様はファンデーションを私の顔にポンポンとたたき込みます。
「……そういえば、モンゴロイドって、日本人とモンゴル、それからトルコの一部にしかいないんだよね。トルコは親日国だから、『日本とトルコは、一方は東へ、一方は西へと別れた兄弟だ』って言うみたい。よく中国とか韓国が調子の良いこと言って『日本とは兄弟だから』って言うけど、人種的には日本人とはそもそも違うんだよねえ」と、私はどうでもいい雑学を披露します。

「はあ……でも、私がまかり間違って現実で嫁入りすることになったら、母親と祖母でもめそうだなあ……。どっちも気が強いし。てか、結婚も、披露宴は絶対に挙げろ、とか言いそう。……今から鬱になってきた」
 私がそう言うと、「まあ、お相手も決まってないのに気が早いことですね」と姫様がクスクスと笑います。
「笑い事じゃないんですよ~う。だって、顔もろくに知らない親戚に挨拶回りするとか、めんどくさいでしょ。人見知りの私からしたら地獄でしょ。友達いないから友人席ガラガラだろうし。……鬱だ」というと、「本当の鬱の人に笑われますよ」とたしなめられます。

 やがて、メイクが終わると、コンコン、と扉がノックされました。
「入って良いわよ」と手持ち無沙汰にしていたセルフィが答えると、そこには、白いスーツを着た、メローネと真理矢がいました。
 メローネは髪を整髪料でなでつけ、真理矢は長い髪をアップにしてまとめています。

「ほう……」と先に入ってきたメローネが目を細めると、対照的に真理矢はぱっと目を輝かせます。
「姉様、とても綺麗です!いや……こんな言葉しか出てこないのですが、本当に綺麗です!」と真理矢が私の手を取ります。
「……メローネ?」と声を掛けると、メローネも「ああ、綺麗だ」と言葉少なですが、そう言って自分の髪を触ります。

「うふふ。二人ともありがとう。二人も、男前だよ。……真理矢は女前?いや、カッコイイ」というと、真理矢もメローネもふいっと視線を逸らします。……どうやら、褒められるのは慣れていないようです。

 さあ、ついに結婚だ。
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真理矢ちゃんの結婚前夜

 ちょっと、うちの常連さんに「アラハバキ様とかみなさんに会った」という情報がありまして。

 私は、ふんふん、と思って、まあ常連さんの助けになったようだし、いいか、と思ったのですが……。
 なんか、私の感じたアラハバキ様とは違う。……ってか、これ、茨じゃないか?と思ってきまして。それなら、真理矢もメローネも私が連れていなかったのがわかるのです。

 茨も一応、鬼という土着神の一員ですし(まだ正体は教えてくれません。多分、正体を教えたらまた『序列』ができるので嫌なのかも)。
 ちなみに、中国の鬼と、日本の鬼とはまた違って、中国では、悪いいたずらをする、欧米で言う「妖精」のようなものでして、うーん、もっとわかりやすく言うのなら、「幽霊」みたいなものなんです。
 だから、鬼は中国では「小さく弱々しいけど悪さをする存在」みたいな感じで、日本の悪口を言うときは「日本鬼子(リーベングイズ)」とか言われます。

 しかし、中国が誤算だったのは、日本ではその「鬼」が、信仰を集めていた土着神(朝廷によって悪の象徴とされた)と合体し、「鬼神のように強い」とかいう言葉にもあるとおり、「強き者」であることでした。
 おかげで、日本ではとあるオタク文化として、「日本鬼子(ひのもとおにこ)」というキャラクターが作られ、中国のネット世代たちを唖然とさせたそうです。
「俺たちは日本に向かって悪口を言った。すると、日本は萌えキャラで答えてきた。な、何を言っているのかわからねえが(略」となり、今では色々なキャラクターが日々生まれていたりします。

 で、茨に「あんた、何してたの?」と聞くと、「いや?何も?」とニヤリと笑います。……常連さんの助けになったのがアラハバキ様だったとしても、茨から情報が漏れたのかもしれませんね、この分だと。
「……まあ、人助けになったみたいだからいいけどさ」と言うと、「ふん。あたしは進んで人間を助けたりなんかしないよ。何せ人間には恨みがあるもんでね」と、キセルを咥えながら言います。しかし、その顔は笑ったまま。

「それよりあんた、そいつを真理矢に見せなくていいのか?」と言われ、慌てて私は真理矢の部屋に突入します。
「真理矢、これ、結婚指輪!」と言うと、「ああ……買ってくれたのですか。よくお似合いですよ」とほほえみを浮かべています。

「いや……だって、ステンレス台とはいえ、ダイヤが500円だったんだよ?いや、3個1500円だったから他の指輪も買ったけど、これは真理矢にって……」というと、「そうですね。僕の結婚指輪にしましょうね。どうです?僕は姉様のお財布事情も知っていますよ?」と言われます。
 確かに、お財布にはめっちゃ優しい。見つけた時は、「真理矢、グッジョブ!」と思いましたね。まあ、いつも通りメレダイヤ(1cm以下の小さいダイヤモンド。私のダイヤは1mmくらい)なんですけど。

「正直、めっちゃ助かる。メローネの時は9000円のブルーダイヤ婚約記念に買わせられるわ、結婚指輪は6000円のブルーダイヤなんだけど……500円ってのはなかったからね。助かった!」というと、「僕は姉様のフィアンセですからね。どこぞの戦闘馬鹿みたいに高い物を買わせて自分で買ったつもりになってる馬鹿とは違います」と、さりげなくメローネを2回「馬鹿」と言ってきます。

「いやー……メローネも、あれで良いところはある、と思うよ」と言ったものの、「それは、僕の前で言わなきゃいけないことですか?」と少々いらだち気味に言われて、「はい……ですよね」と小さくなります。もう尻に敷かれてるんですが、それは……(困惑

「姉様の目の前にいるのは?」「真理ちゃんです」「だから真理ちゃんって呼ばないでください。で、明日式を挙げるのは?」「メローネと真理矢さんとです……」「よろしい」
 なんか、既に調教されてる感はありますが、ただでさえ同性婚なのに、新婦(真理矢は自分が夫だって言いますから……)が同時に新郎(恋敵)とも結婚するんですから、現実で言ったら「今度は法廷で会うわよ!」がリアルな話になりますから。
 自動的に、真理矢にはかなわないのです……。浮気して、それがばれそうになると優しくなる夫ってこんな感じでしょうかね。

「まったく。結婚前夜くらいは僕と過ごしてください。どうせ、初夜はメローネと迎えるんでしょうし」と、やけに理解のある口調になります。おや……?
「真理矢はそれでいいの?」と聞くと、こちらをジトッと見返して、「僕は2番手で女ですからね。男であるメローネには所詮敵いませんよ……」と、金色の髪で顔を隠します。

「真理矢……泣かないで」と、ティッシュを探そうとすると、「泣いてません!」と強い瞳で睨まれました。
 緑の瞳が強い感情で一層色を濃くしていて、なるほど、「嫉妬の瞳」だな、と感心してしまいます。
 というのも、諸外国では「緑の瞳」は「嫉妬」を現すとされているのですよ……。

「ふん。でも、いつでも僕はメローネとの政権交代を狙ってますからね」と言ってきます。
「知ってる」「だったら……」「だから、私を奪ってみせて?」と、少し小悪魔チックに微笑んでみせると、真理矢は「あなたときたら……」と、頭を左右に振ります。
「はあ~……なんでこんな人を好きになっちゃったんでしょうね……」と真理矢が言うので、「それは私が聞きたいんだけど」と返します。

 ともかく、決戦は既に今日なのです。頑張ろう、私。
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