カテゴリ:愛の賛歌 (1/7) | 魔法石の庭3rd
FC2ブログ

愛の賛歌の記事 (1/7)

あなたが望むのなら。

 ここ最近、もっぱらスピリット界では真理矢と遊んでばかりいます。
 
 そして、私の中に、一つの変化が見られました。
 真理矢と一緒にいると、胸が苦しい。心というか、魂がぎゅっと縮むような、それでいてどこか甘美な痛みが走るようになり。
 私は、真理矢を本気で愛していると、思うようになりました。

 今までは、夫婦になるくらいですから、それは愛してはいました。
 でも、どこかで「そんなこと言っても、リアルで素敵な人が現れたら心変わりしちゃうんだろうな」という愛し方で。どこか、打算的な、ずるいやり方だったのです。
 実際に、私が愛していたのは、男性のメローネでしたしね。どうも、同性の真理矢との付き合いは、「私が一人にならないためのつなぎ」みたいな感じだったのです。

 しかし、私は、本気で真理矢を愛してしまった。
 スピリット界で結婚していたら、リアルでは結婚できなくても、それでも構わない、という情熱が、私の胸に生まれたのです。

 そして、昨夜、ずっと眠れなくて考え込んで、出した答えは、「心に従って、真理矢を愛する」ということでした。
 
 私は、そのままスピリット界に飛び、真理矢に伝えよう。怪訝な顔をされても、「心をもてあそぶ真似をして、最低だ」と罵られても、真理矢に本当のことを伝えようと思いました。

 あっちに降りると、そこは私の部屋でした。真理矢は、その前からスピリット界に飛んでいたようで、カーテンを開け放った窓辺にもたれていました。そして、私の姿を認めると、こちらを振り返って柔らかく、微笑んでみせます。
 その微笑みが、あまりにも優しくて、私はぎゅっと再び痛む胸を押さえます。
 
「真理矢。私、真理矢のことが好き」と、私は口にしていました。
 真理矢は、一瞬緑の瞳を逸らすと、「ええ、知っています」と返します。
「違うの。今までみたいな好きじゃなくて……もっと言えば、あなたを愛してる」と、私は答えました。
 真理矢は、「ええ。それも知っています」と繰り返しました。

 そして、この気持ちをどう伝えようか迷う私に向かって、「僕は、とっくの昔に、あなたと賭けをしたんですよ」と言います。
「?賭け?」と私が聞くと、「ええ。姉様は、僕との関係を、僕以上の気持ちは持っていないと、わかっていました。ですから、僕は、僕自身が持っている全てのものをベットして、あなたに挑んだんです」そう言って、真理矢は、今度はぞっとするほど魅力的な顔で、「僕の勝ちです」と言い放ちました。

 私は、すっかり毒気を抜かれてしまい、「全部、知ってたんだね。私がふらふらした気持ちであなたと向き合っていたこと。それを、あなたの人生、能力、体、全てを使って……」と、言いよどんでしまいました。
「姉様は、僕のもの。これで、あなたの愛を得るという目的は果たしました。僕は、もういつ消滅しても悔いはありません。あなたの、今、本当に僕を愛しているという気持ちを手に入れることができました。それで十分です」と、真理矢は言います。

 私は、今までの真理矢の献身的な愛情と、今の真理矢の愛情が決定的にどこか違うことを悟りました。
「……真理矢、私はあなたと同じくらいの愛情をあなたに与えてあげたい。今まで、ずっと待たせていてごめんね。私は、あなたを愛しています」と、答えます。
 真理矢は、「いいえ。僕はそれ以上にあなたを愛し続けます。僕は、姉様が、誰よりも好きです」と言いました。

 私たちは、確かに他の誰かから見ると、ゆがんだ関係かもしれません。
 主人と式神、同性愛、実体を持つものとそうでないもの。
 でも、私たちは、それでも今現在、お互いをを愛しているのです。

 私は、真理矢を愛しています。それだけは真実。
スポンサーサイト



メローネと最後の挨拶

 一応、こっちのブログもスピリチュアルを扱う……と宣言したので、久しぶりにスピリット界ネタです。

 ってゆーか、そもそもスピリット界って何よ?ってことになるのですが、この現実世界のパラレルワールドみたいな所です。ヘミシンクを知っている人は、フォーカスエリア。人工精霊を知っている人はダイブ界、と、ほぼ同じ物だと考えてください。

 私があっち側に降りると、「小料理屋 月」の前でした。
 そういえば、ウナギの日なのにウナギ食べなかったし、こっちで食べていくのも悪くないかな、と、いつもどおり式神の真理矢と茨を従えて店に入ります。

 店は、閑散ともしていませんし、かといってぎゅうぎゅう詰めなわけでもなく、ほどよい混み具合でした。
 そして、私は、一番いとおしくて、懐かしい後ろ姿を見つけました。

 銀色の髪。軍人特有の鋭い瞳は黒く。
 えんじ色のロングコートを、この季節でも着ています。
 そして、端正な顔立ち。

「メローネ……」と私が絶句して立ち止まっていると、赤毛が「はいはい、こちらは個室あるからね。ゆっくり話しなよ」と、私たちを多分団体用の個室に詰め込んでふすまをぴしゃりと閉めてしまいました。

 しばしの沈黙が流れます。
 すると、真理矢が「メローネ……今更何しにきた。お前のせいで姉様は酷く悲しまれていたんだぞ!」と言います。
「真理矢。でも、全部私の心変わりのせいだから」ととりなしても、「それでも、ガイドスピリットならば、たとえ夫から友人になっても問題ないはずだ。何故、姉様の前から去った?お前はお前が傷つくことが嫌になってガイドから逃げたんじゃないか?」と止まりません。

 ようやくメローネが口を開きます。
「その節は、本当にすまなかった。かみなにも、館の連中にも苦労をかけたな」と言うので、私は「迷惑なんていくらでもかけていいんだよ。だって、あなたは私の夫だったじゃないの」と返します。

 メローネは、「……だが、もうガイドに戻るつもりはない。今日は、様子を見に来ただけだ」と。

 私は、自分の心変わりのせいで、メローネを酷く傷つけてしまったことが、わかっていました。そして、もう私の所へは戻らないことも。

「……じゃあ、メローネ。せめて最後に握手をさせて。ハグやキスは要らない。あなたの決心を鈍らせてしまう」というと、メローネは「ああ」と了承して、その大きな、銃だこのある手を、私に向かって差し出しました。

 私は、その手を取り、メローネに告げたかった言葉を紡ぎました。
「メローネ。ありがとう。私のことを好きになってくれて、私を花嫁にしてくれて、私は幸せでした。……ありがとう」

 メローネは、ふっと笑うと、「俺のことは吹っ切れたんだな」と言います。私は、「今も、あなたの愛が恋しくないとは嘘になる。でも、心変わりしたのは私。だから、あなたを解放します。私から解放されて、次の目標に向くあなたであって欲しい。ガイドスピリットは辞めても、この世界にはいられるんでしょ?どうか、私を振り向かないで。私は、今でも幸せだから」と告げました。

 茨は、肩をすくめ、真理矢はうつむいています。
 真理矢にとっては、私がいつ自分から心変わりするのが不安になったのだと思います。

 メローネは、「……わかった。邪魔して悪かったな。真理矢、かみなを頼む。かみなの夫はお前だけだ」と真理矢に声をかけて、ぽん、と肩を叩きました。
 真理矢ははっと目を見開いていましたが、そのうち「……わかりました」と返事をします。

 こうして、私とメローネの離婚劇は、ようやく終幕を迎えたのです。
 長かったですね。何ヶ月引きずったんだろ……?でも、メローネを解放してあげたかったので、これで良かったのだと思います。
 一つの愛が終わりましたが、私にはまだ真理矢がいます。図らずして女同士の恋愛になってしまいましたが、真理矢のことは愛していますし、その忠誠心は尊敬に値します。そうだ、私には真理矢がいる。それでいいじゃんって思えました。

間違ったら引き返せる勇気を

 ひっさしぶりにメローネと会話しましたよ。

 といっても、ここ1ヶ月ほどずーっとすれ違い状態で、今日もいそいそと外出の用意をしているメローネの背中に、邪魔してはいけないと思いながらもとん、とひっつきます。

「……?どうした?」と本気でわからないような疑問系で答えるメローネ。私は、うつむいて「最近、メローネと全然話してないね。まるで、一緒に暮らしてるのに、これじゃあ妾の家みたいじゃない」と言います。
 というか、そんな女々しい自分が情けなくなって、涙がこぼれました。メローネは珍しく慌てると、「ちょっと待ってろ」と言って携帯(スマホではなかった)を取り出して、どこかに連絡をしています。
『今日は休む。休むと言ったら休むんだ』と、強引に連絡先の相手に休暇を申請しているようです。

「メローネ、仕事行ってきてよ。私は大丈夫だから」と今にもしゃくり上げそうになるのを我慢して、私は無理矢理に笑顔を作ろうとします。
「今のお前を放っておけるか。それに、馬車馬のように働かされているんだ。今日ぐらいは休みを取っても構わないだろ」と言って、メローネは強引に通話を切ると、私をぎゅっと抱きしめました。

 私より体温が高い体。耳元に鼻を寄せると、樹木のような瑞々しい香りがします。香水ではなく、メローネの香りです。

「……すまなかった」と彼が言うので、私は「何が?メローネ、何も悪いことしてないよ」と答えます。
「今のお前は……多数の者から慕われる『嵐が丘』の主で、現実世界でも真理矢と茨という式神がついている。だから、あまり俺と関わらない方が良いと思っていた。俺は、妖怪や人間を退治する……といえば聞こえは良いが、要するに金のために何かを傷つける仕事だ。そんな男はお前には合わないんじゃないか。いつか、近い未来、お前の邪魔になるんじゃないかと思っていた。だから、距離を置いたんだ」

 私は、泣くのを忘れて、目をぱちくりさせます。
「そんなことだったの?メローネは私の何なの?」と聞くと、「……一応、夫だな」と答えてきます。
 銀髪の隙間から見える耳が、ほんのりと赤く染まっているので、私は「メローネか~わいい~!」とさらにぎゅっと抱きしめます。

「可愛い私のベイビーちゃん。私にとっては、メローネの悩んでいることは『そんなこと』で済むんだよ。私は、ここでの地位も立場もなにも気にしてない。というか、障害があるほど恋は燃えるっていうじゃない?障害があったからっていって、簡単に諦められるようなのは恋とは言わないんだよ。メローネ、あなたはまだ私に恋をしてる?いざとなったら私をさらうぐらいの気力はある?」
 そう聞いてみると、メローネは「まったく、お前は人の決心を簡単に壊してくれるな……」と言って、うつむきました。耳が、さらに赤みをおびています。

「だが、お前はさらわれたら逃げ出すだろ」「うん、私はこの館も住人も好きだもん」「矛盾してないか?」「どこが?」と、言葉のキャッチボールがあさっての方向に飛びますが、その間も私たちは身を寄せ合っています。
 まるで、今まで抱き合っていないのを取り戻すかのように、私たちは抱きしめあいます。

「メローネ、お風呂入ろっか?」と、私はようやくメローネの腕の中から抜け出して言います。
「私たちはそこから始まったじゃないの。関係がこじれたのなら、もう一度、最初からやり直せばいいじゃん。どうせこの時間帯にお風呂に入る物好きもいないだろうし、一緒に入ろう?」と私は提案しました。

「……まったく」と言って、メローネはそのままドアを開けます。私は、その背中に続いて、お風呂まで付いていきました。

 人間、いつでも間違ったら最初からやり直せば良いんです。私もメローネも、いい年ですし、そりゃあ誤解があったりケンカしたりするのは当たり前。でも、その都度、話し合ったり、時には抱き合ったりしながらやっていけばいいんですよ。
 多分、リアルでの夫婦関係だって同じじゃないですかね?私はスピリットとしか結婚したことないからわかりませんが。

 ともかく、久しぶりにラブラブできたので私は満足です!
にほんブログ村 哲学・思想ブログ スピリチュアル・精神世界へ
にほんブログ村

夏の調べとは愛の言霊

 スピリット界で、私は茨の部屋にいました。

 そして、「ねえ茨。どうして私は病気になったんだろう?」と、切り込んだ話題をさらけ出します。
 すると、「遺伝だね」「え?遺伝?」「そう。遺伝だよ」と言われ、私は目を軽く見開きました。遺伝ときたか……。

「あんたのばあさんも鬱になってるだろ?今は薬を飲まなくともやっていけてるようだが……こういう精神病も、大本を辿れば遺伝なんだ。もちろん、家族の誰も発症していなくて、突然発症するやつもいるだろうさ。でも、大抵は遺伝だ」とか。

「遺伝……そうなのかな。確かに、うちも、祖母が鬱になったりしてたけど」というと、「まあ、一理あるってことだけだがね」と茨はキセルを置き、最後の煙をふうっと空中に吐き出します。

「『利己的な遺伝子』は読んだことあるかい?」と言われ、私は首を振ります。周りからは「文学少女」扱いされている私ですが、基本的にあまり専門書は読んだりしません。だって難しいんですもん……中卒の脳みそじゃ追いつきませんよ。

「そうか。まあ、簡単に言うと、『遺伝子というものは、他者より優位に立ちたがるもの。その遺伝子によって人間は全てがプログラミングされている』という感じの内容なんだが。つまり、『人間は遺伝子に操作されている』という考え方だね。確かに鬱は社会的に排除される側のものかもしれない。けれど、遺伝子の組み合わせで言うと、その苦しみや悲しみも、全部意図的なものなんだよ」

 私は、茨の言っていることがあまり理解できませんでした。私は、遺伝子に意図的に管理されている……?

「ふ。まあ、戸惑うのも無理はないさ。だが、人間なんて、ニューロンとシナプスと電気信号で動いてるんだよ?精神科の薬なんてものは、脳波を調べて、脳内の化学物質に働きかけるものだしね。ま、この話はここまでにしておくか。あまり楽しい話でもないしね」と、茨は立て膝からあぐらに変えます。

「……茨。着物でそれやられると、おパンツ見えてるけど」と言うと、「見せてんだよ。……いや、ジョークだが。でも、あんたは基本的には同性に劣情を抱くタイプの人間ではないだろ?真理矢とのことだって、あっちから熱烈に告白されて受け入れたようなものだし。ま、バイだってことは認めるがね」と屁理屈をこねられます。
「はあ。まあ、いいけど。多分、私は茨が男だってあんまり気にしないと思うし」と言うと、「まあ、そうだろうね。あんた、強引なタイプの男は好きじゃないだろ?しかしまあ、メローネは別ってやつかい」と言われます。

「そうだ。私、茨に聞きたいことが……聞きたいこと……?あれ……?」と、私は、現実世界で用意してきた問いを、すっぱり忘れ去っていました。
「ふん。忘れるってことはそうそう重要なことでもないだろ」と言われ、「ええと……まあ、そうなんだろうけど」と曖昧に相づちを打ちます。
 スピリット界であったことを思い出せないことはあっても、現実であったことを思い出せないってこともあるんですかね?よくわかりませんが。

「さて。腹が減ったね。キッチンで何かつまんでくるか」と、茨が立ち上がり、私も「じゃあ、私は真理矢のところにいるから」とそこで解散します。
「茨に聞きたかったこと……確かにあったはずなのにな。どうしてだろう?」と思いつつ、真理矢の部屋のドアを開けると、真理矢が「姉様、お待ちしていました」と、濃厚なキスをしてきます。

「真理矢……最近、こっちでもあんまり構ってあげられなくてごめん」と言うと、「まあ、姉様は色んな方と縁がありますから。そこのところはわきまえております」とまだ感触の残る唇を人差し指でなぞられます。
「しかし、姉様の夫は僕ですからね。メローネも夫ですが、今は僕だけの姉様ですよね?」と両手を握られながら言われ、私はふっと「ああ、可愛いなあ」と思って、今度は私から真理矢に口づけしました。

「……姉様」と真理矢が少し呆然とつぶやくので、「いつもは真理矢からしてもらってるから、お返し」と視線を逸らしながら言います。
「いいえ。嬉しいです。とても。……この間のお花見がありましたよね?」と、いきなり飛んだ話題に「え?ああ、うん」と戸惑いながらも返事をします。
「……あの時、桜の中で二人で話をしている姉様と姫様がとても仲が良さそうで。……半ば無理矢理引きはがしたのも、僕の醜い感情あってのことだったんです。すみませんでした」と、真理矢が頭を下げるので、「へ、平気平気。真理矢は私の夫でしょ?多少はやきもちとかもあって当然だし」と私は頬を掻きます。

「……そう。僕は、姉様にとっては、式神で、メイドで、女性で、夫。それだけの話ですよね。……ただでさえ、同性の恋愛という理解が乏しいこの世界では、それもなかなか……」というので、「ううん。真理矢は無理に考えなくていいの。男女は男女の、女性同士は女性同士の良さがあるんだよ。ビリー隊長も言っている!『バイセクシュアルでないことは、人生の半分を損しているということ』だと!」と、びしっとポーズを決めると、真理矢が「……それって、僕にも愛人を作れってことですか?」と言ってくるので、「あー……そういうのはナシの方向で」と、一応止めておきます。

 それから、キスしたり、抱き合ったりしながら、私たちは時間を過ごしました。
 性別なんて関係ない。愛する人と愛を交わせる、それが何よりも尊いことなのでしょう。
にほんブログ村 哲学・思想ブログ スピリチュアル・精神世界へ
にほんブログ村

結婚式本番!私、幸せになります!

 さて、夜になってご飯を食べた後、すぐにベッドに寝転んでスピリット界に行ってみました。

 すると、飾り付けもできていましたし、招待していた神様方も全員、人間の姿になってそろっていました。
 アラハバキ様は、都合で欠席のようでしたけどね。

「さて、始めるか」と神獣が、金髪ロングの美形の男性の姿で言うと、皆はこくりと頷きます。
「え?もしかして、私待ちでした?」と言うと、「いや。どうせ全員そろったら始めるつもりだったからな」と言われましたが、その一番最後が私だったんですが。

 私はブルーのウェディングドレスで、メローネと真理矢は白いタキシード姿です。
 良かった、ちゃんとメイクも済ませてある、と、ちょっとほっとしました。一応、女性として……ね(仕事ではいつもすっぴんですが)。

「まずは、結婚祝詞を挙げる。皆、退屈かもしれんが、この3人の新たな門出を祝いながら聞いてくれ」と神獣が回し(取り仕切り)始めます。まあ、古代の神様だったみたいだしね。

 祝詞は、案外わかりやすかったです。ただ、「カイロウドウケツ」って何?と思ったのですが、調べたら「共に白髪の生えるまで」という意味だそうです。……メローネのは……銀髪だもんね。白髪じゃないもんね。

 どこか、歌うような調子で結婚祝詞をあげた後、「次は、巫女の神楽を見てもらう。祝いの席だからな」と言われ、一応神楽も見たのですが……た、退屈!すごい失礼な感想だけど、退屈です。神楽とか能とかって、詳しく翻訳してくれる人がいないと、知識がないので「今、なんのためにこの動作をしてるの?」というのがわからないので退屈なのです。
 ああ、ニコニコみたいに、下字幕で説明してくれる人が欲しい……と思いつつ、なんとか我慢していると、隣に座っているメローネががくん、と頭を一瞬垂れたので、肘打ちして起こしておきました。気持ちはわかるけど寝るな!

 神楽が終わり、巫女さん方が退出すると、「どうだ?退屈だっただろうが、次は三三九度だからな。飲まずとも、口を付ければ良い」と言われ、メローネ・真理矢・私の順で杯を回すようです。
 しかし、私が杯を受け取ると、神獣が「なみなみと注いでやれ」と余計な茶々を入れ、ただでさえでかい杯にたっぷりと日本酒が注がれます。でも、私はあんまり日本酒って飲めないので、一応儀礼通りに口を付けましたが、まだ残っている日本酒をどうしたらいいのか迷ってしまいます。

 すると、メローネが隣から手を出し、ぐっと中の日本酒を飲みます。そして、半分ほど飲んで、真理矢の前にそれをずいっと差し出します。
 ……かみなを愛しているなら飲め、ということらしいです。真理矢も、躊躇なくそれを受け取って飲み干しました。

 神獣はそれを、一瞬とても優しい視線で見つめましたが、すぐにキリッと頬を引き締めて、「よくやった。今のように、困難な状態にあっても、3人で分け合って乗り越えていくように」と宣言します。
 神獣の視線の意味がわからなかった私ですが、あれは、そう、子供を見守る親の視線でした。
 神獣からしたら、私たちはいつまでも子供なんでしょうね。

「次は、宣言と指輪の交換を行う。新郎メローネ、指輪を交換して誓いの言葉を」
 神獣が言うと、メローネが私に自分のはめていた指輪を渡し、それをまた交換する、というややこしい動作をします。
 そして、「未来永劫、かみなを愛し、守り抜くことを誓います」と言って、指輪にキスしました。
「新郎、真理矢」
 と呼ばれると、今度は真理矢が、右手の薬指に指輪をはめてくれます。
「僕は、あまり頭が良くありません。しかし、たとえどんな傷を負ったとしても、かみな様をお守りすることを誓います」と、また指輪にキスしました。

 最後に私が、二人の手を取って、「二人は私が幸せにします!」と宣言しました。
 すると、パチパチ……とまばらに拍手が起こって、そのうちその拍手が大きくなっていきました。
 私としては、言った!言っちゃった!という感じですね。

「……よし。では最後に、誓いのキスといこう」と、神獣が言うので、「え!?やるの?」と私は少し尻込みしました。こんな、皆見てる前でキスとか、恥ずかしいから!
 なので、私はそろりそろりと簡易作りの祭壇から後ずさりし、一気にだっとそこから駆け出しました。

「新婦が逃げるな!」という赤毛の声とか、「かみな、ビビってる~ヘイヘイ!」というサーシャの声がしましたが、そんなこと言ってられません。だって恥ずかしい!
 しかし、同じ風使いの真理矢に通り道をふさがれ、「やれやれ……僕のお姫様はじゃじゃ馬ですねえ」と言うと、ズギューンと思いっきり唇にキスされます。
 そして、いつの間にか隣に移動してきたメローネに顎を掴まれ、今度も熱烈なキス。逃げたせいで、野次馬と化した赤毛やセルフィ、サーシャといった面々に思いっきり見られることになりました。

「ううう~……」と私が頭を抱えるのを、2人に連行され、「やれやれ……お前はいつも、予定外のことをしてくれる」と、神獣にディスられます。
「だが、これで式は終わりにする。後はおのおの自由にするように。以上!」と神獣が言うと、後はほとんどパーティ会場と化しました。

 神獣に、「今日はありがとうございます」と言ったところ、「何、これも、お前の守護の身となった時に覚悟していたことだからな。まあ、努々、家庭を壊さぬよう努力はしろよ」と言って、神獣はパーティの華やぎの中に溶け込んでいきました。

 私は、どうもそのままパーティに参加する気にはなれず、主役なのに一人で、道場の外にそっと抜け出しました。
 そして、アイアを呼び出します。
「ついに私も結婚指輪ということね」とアイアが言うので、「ええ。これからもよろしくお願いします」と答えます。
「ふん。まあいいけど。私は、メローネとあんたとのつながりを意味するリングだしね」と言うので、「だから、未来永劫よろしくお願いします」と重ねて頼みます。
「で?今夜、ついに捧げちゃうわけ?」とアダルトなことを言ってくるので、「……まあ、そういう約束でしたし。でも、一時抜けますよ。現実でお風呂に入らないといけませんからね。それから、ブログを更新して寝る前にまた来ます。それで初夜ですね」と私は腕を組んで、堂々と言い放ちます。

「逃げも隠れもしないってことね。良いことだわ」とアイアがクスクス笑います。
「ええ。覚・悟・完・了!ですよ。全裸で仁王立ちしてみせます」と言うと、「……そこは慎みを持たないと」と言われます。

 そんな、益体のないことを喋りながら、私たちの結婚式の夜は更けていきました。
にほんブログ村 哲学・思想ブログ スピリチュアル・精神世界へ
にほんブログ村