カテゴリ:スピリットとの会話 (1/10) | 魔法石の庭3rd

スピリットとの会話の記事 (1/10)

エレ君とクリームソーダ

 昨日のスピリット界。

「エレ君、毎日勉強で感心だから、ジュースおごったげるよ」と、エレ君をアルテミスに誘いました。
「ええと……でも、僕、バーに行くような服がなくて……」と、ローブ姿でごにょごにょ言うので、「子供が遠慮なんてするもんじゃないよ。ほら!」と、洋服を白いシャツと半ズボン(すみません、私の趣味ですねw)に変えます。

「おいおい、かみな、この間赤毛に『エレを連れてくるな。子供が酒場にいるとまずいから』って言われたばかりだろ?」と茨が忠告してくるので、「いいじゃんいいじゃん。たまにはそういうのもさ」と強引にエレ君を連れて行く方向に話題を切り替えます。

「はあ。まあ、良いのではないでしょうか?かみなはアルテミスのオーナーでもありますし」と真理矢も珍しく賛同したので、茨は「わーかったよ。しょうがないな」と両手を挙げて降参のポーズを取ります。

 そのまま、4人でアルテミスへ。
「赤毛ー、オーナーのお帰りだよ!」と言うと、赤毛は顔をしかめて「だから子供は連れてくるなって……」と言います。
「ああ?私は何だっけ?オーナーぞ?私、オーナーぞ?」と言うと、赤毛は「仕方ないなあ……でも、子供に酒は飲ませないでよ?」と言ってカウンターに座るよう促します。

「さて、エレ君、ジュースは何が良い?色々種類あると思うけど……」と私がソフトドリンクのメニューを指して言うと、「え?こんなにジュースって種類あるのですか?」と軽く驚いています。
 まあ、それもそのはずで、ソフトドリンクの中にはジュース以外にもソーダ類とか、ノンアルコールカクテルなんかも含まれているからなんですけどね。

「ぼ、僕はりんごジュースで……」と、エレ君がきょろきょろと落ち着かないまま言うと、茨が反対側からにゅっと手を伸ばしてきて、「子供が遠慮するもんじゃないってかみなに言われたろ?前、クリームソーダを飲んでみたいって言ってたじゃないか」と、少し料金の張るクリームソーダを指して言います。
「え、ええと……」とエレ君が挙動不審のままでもごもごしているので、「エレ君。ここは私たち館の人間が運営している飲み屋だから、少しくらい高いものを頼んだって平気なの。このお兄さんだっていつも優しいでしょ?」と赤毛を指さすと、赤毛は「そうとも。私ほど優しいガイドはいないよ?」と胸を張ります。……威張るな。

「うー。じゃあ、それで……」とエレ君が決まったところで、私は「じゃあ、私は林檎ジュースを使ったカクテルを頼もうかな」と雑な頼み方をします。……だって、カクテルの名前ってよく知らないし。
「はいはい、かみなには甘いカクテルね」とどこか馬鹿にされている気がしたので、「赤毛、私のことお子様舌だって思ってないでしょうね?」と睨むと、「思ってない思ってない」と、思いっきりあしらわれています。

 そこに、「おう、茨とその仲間たち!」と、聞き覚えのある声が聞こえました。
「あ、茜さん。こんばんは」と挨拶すると、黒髪をお団子にして角を隠した茜さんが茨の隣に座ります。
「茜さん、一応気を遣ってくれてるんですね。角を隠すなんて」というと、「ふふん。あたしは茨みたいに厚顔無恥じゃないからね」と胸を叩きます。……既に結構飲んでいるようです。

「ふん。あたしの角は茜みたいにちまっとしてないからね。あーあ、隠したくなるくらい小さい角で羨ましいよ」と茨が言うと、茜さんが「茨みたいに性格がぐるぐる曲がってないからねえ。その羊みたいな角、私こそ羨ましいね」と応戦します。
「……ちょっと。二人とも、ケンカするなら外でやってくださいよ」というと、二人はきょとんとこっちを見て、『ケンカなんかしてないけど?』とハモります。この鬼たち、仲が良いんだか悪いんだかわかりません。

「君たち、仲が良いのはわかったから、あんまり大声出さないでね?はい、注文の品」と、私の前には林檎ジュースを何かで割ったグラスが置かれます。ぐびっと飲んでみると、林檎ジュースの甘さの後に、お酒の苦みがきます。
「美味しい。やっぱ、赤毛にバーテン任せたのは良かった。どんどん進化してるからね」というと、「私も勉強してるってことさ」と赤毛がドヤ顔を見せます。

 エレ君はというと、ほわ~っとメロンソーダの泡を見つめています。
「……早くアイス食べないと溶けちゃうよ?」と声を掛けると、ようやく長いスプーンでアイスを取り、一口。そして、「……美味しい。本当に美味しいです!」と言って、私の方ににこっと笑ってくれました。

「……なんだ。エレ君もそういう顔できるんじゃん」と言うと、エレ君は「そういう顔……?」とわからない様子でしたが、私は「まあ、笑顔が出るなら、元気になってきたってことだね」とカクテルをぐいっと傾けます。

 エレ君の笑顔で酒が美味い。そんな、良い夜でした。
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『無駄』を楽しめるということは

 さて、多肉のことばかり書いてもなんですから、久しぶりにスピリット界のことを書きますかね。

 というのも、久しぶりに女教皇の所に行ったら、宿題を出されたのです。
「あなた、式神とばかり話していてはだめよ。ちゃんとガイドとも話さないと」と言われたので、時間がないときはおざなりにあっちに降りて、式神二人とばかり会話をしているのをばれた!とちょっとギクッとしました。
「なるほど、話題がないようね」と、女教皇はくいっと自分の顎を上げます。

「それなら、私が話題を提供してあげるわ。この館のガイドに、『自分のしている無駄なこと』を聞いて来てご覧なさい。もちろん、そのまま聞いてもだめよ。ちゃんと、会話になるようにね」と、部屋からぽんと式神二人と一緒に放り出されます。

 茨が、「さあて、どうする?女教皇の機嫌が悪くなるのを承知なら、別に無視しても構わないけど」と言うので、私は「それは困るな。女教皇、根に持つタイプだろうし。しょうがない、聞いてこよう」と、ぐるっとガイドの部屋を一周することにしました。

 まずは、赤毛の部屋です。
「赤毛さあ、アルテミスのお客さんと話してて、無駄だって思ったことない?確かに、暗黙の了解で一人30分までって決まってるけど、もっと効率を良くして徳を稼ぎたいとは思わないの?」と私が聞くと、赤毛は少し首をかしげて、「ないね」と言い放ちます。
「私は、女の子と話してるのが好きなんだ。どんな無駄話でも良いんだよ。女の子と話してると、すごく落ち着くし、客とはそれから先の関係になろうとは思わないね。そりゃあ昔はワンナイトラブなんてこともあったけどさ。それと接客は別だね」とか。「ふーん……」

 次に、姫様の部屋。……にいなかったので、アルテミスまで降りて厨房を覗いてみると、姫様が大鍋と格闘しているところでした。
「姫様、そういう下処理って、無駄じゃないんですか?たとえば、精霊に任せるとか、他にも人を雇うとか……」と言いかけると、姫様は汗を拭きながらにこっと笑い、「いいえ。これは、私がやらなければ意味がないのです。精霊たち……あの子たちもずいぶんと慣れてきましたけど、それでも、『アルテミスの味』は私のものなんですよ。確かに、お料理は大変ですけど、それで徳を頂いている分では、ちゃんとしたお料理をお出ししたいんです」と言います。

 それから、このブログではあまり活躍の場がない(申し訳ない)スーパーマンの部屋。
「僕にとって無駄なこと?いや、ないな。全部必要だよ」というので、「一日に何回か館をパトロールしたり、アルテミスの用心棒としてずっと待機の時間でも?」と聞くと、「うん。その通りだ。僕が暇だってことは、何も事件が起きないということさ。その時間も、全てが無駄ではないんだよ」と答えます。

 そして、セルフィの部屋。
「なんだか、皆に無駄なことを聞いて回ってるみたいね」と先手を打たれ、「……まったく、その聞き耳の早さは何なの?」とあきれてしまいます。
「で、私の無駄なことね。たとえば、あなたたちとお茶会をしたりしている時間かしら」というので、「お茶会は無駄じゃないと思うけど……」と反抗してみたところ、「あら。暇な時間に色んなことをくっちゃべって、それだけで何の成果もなくて良い。それって立派な『無駄』じゃないの?」と言われます。確かに……。

 最後に、私たちの寝室に行きます。
「メローネ、メローネの無駄なことって何?」と聞くと、「俺か……俺はそうだな。こうして銃を手入れしている時間だな」と答えます。「え?銃を手入れするのって、別に無駄じゃないでしょ?」と聞くと、「いや。この銃を分解するのは今日が2回目だ」とか。
「男の人ってそういう所あるよね。無駄に何かを分解して、組み直してみたり。確かに無駄ではある、か」と納得すると、「それに、1回目で見落としていた不備が見つかったりするからな。いざというときにジャミング(弾詰まり)したり、下手をすると暴発してこちらの腕がやられる危険性がある。まあ、念のためというやつだ」と、薬莢の入っていない銃を向けられ、私は両手を上げて降参します。

 そして、女教皇の元へと戻りました。
「どうかしら?何か成果はあった?」と女教皇が言うので、私はまるで面接を受けている学生のように緊張してしまいます。
「ええと……皆、それぞれ言ってることはバラバラだったけど、一つ、繋がっていることを見つけたのです。皆、無駄なことをしているはずなのに、何故か楽しそうで。まるで、無駄ということを自分の中で内包してしまっているような。そんな感じでしたね」
 
 私がそう答えると、女教皇は「ふん。まあ、そうね」と、合格点を出してくれました。
「ちょっと前に流行ったでしょう?トリビア。『人間は、無駄な知識を仕入れると快感を感じる生き物』だと。それは、人間というものと、ガイドスピリットとが同じように持っている性質なの。たとえば、私がこの間植えた玄関の薔薇と、この薔薇」と言葉を句切って、女教皇は自分の部屋にある薔薇の鉢植えに手を掛けます。
「これも、あなたに頼めば、半永久的に咲かせることができるわ。それに、今の科学力で言うと、そろそろ『世話をしなくても枯れない植物』が出てくるでしょうね。でも、それじゃダメなのよ。それが流通しても、私たちは植物の世話をするでしょう。たとえ無駄だとわかっていてもね。無駄って、そういうことよ」
 
 なんとなく、わかったようなわからないような?まあ、女教皇の個人レッスンが受けられたのですから、まあ必要なメッセージなのでしょうね。
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久しぶりにアルテミスに。

 さあて、久しぶりにスピリット界の記事を書きますかね。

 一昨日は、真理矢と茨を連れて、アルテミスに行ってきました。
 すると、バーテン姿がすっかり様になった赤毛が、微妙に顔をしかめて「なんだ、かみなたちか……」とちょっと嫌そうにします。

「赤毛。前から思ってたんだけど、私たちが来ると嫌そうにするのは何なの?ケンカ売ってんの?」とカウンター席に腰掛けると、赤毛は「だって、かみなたち、ココに何しに来てるのさ。暇つぶしに上司にちょくちょく来られたんじゃ嫌な顔もするだろって」と返されます。
「上司?誰が誰の?」と言うと、「かみなが、私の。一応、ここのバーのオーナーだろ?おっと、『序列ができるのは嫌だ』なんて言うなよ?ガイドとマスターってだけで既に序列はできてるんだからね」と言われます。

「うーん……でも、それなら上司あしらいぐらい平気であんたならできるでしょ。作り笑いとか得意そうだし」というと、「……まあ、そこは、私はかみなと結構長い付き合いだからね。本音でケンカするぐらいはできるよ」とか。

「あら。赤毛さん、照れてるんですよ。最近、かみなが来ないから、距離の取り方がわからないって」と、横から姫様が小鉢を出してくれながらクスクス笑っています。「姫ぇ……」と、赤毛が、泣きそうな、情けない表情を浮かべます。
「なんだ。赤毛も私のこと大好きってことだね」と言うと、「そんなことないよ」と瞬時に顔を澄ました表情に作り替えて、答えてきます。「素直になれよ、ハニー」と笑いながら私は手を伸ばしますが、赤毛はその手をぺちっと叩いて、「私はいつも素直だよ、ダーリン」と言います。

 真理矢がちょっとむっとしているので、私はその辺で赤毛といちゃいちゃするのを止めました。
「赤毛、真理矢がおこだから、なんかサービスしてあげてよ」と言うと、「サービスならいつもしてるだろ?私の笑顔は100億の価値があるし」とにっこりと作り笑いをしてきます。

「うっわ。自分で100億とかクソ痛いんだけど。……まあいいや。真理矢も茨も、今日は飲もうぜ」と小鉢を取って中身を確認すると、それはかつお節のかかったおひたしのようでした。……バーでおひたしとは、ねえ。姫様、一応今は洋食も作れるけど、元々は和食派だったもんなあ。

「では、僕はスクリュードライバーを」と真理矢が気を取り直して注文すると、茨が「あたしは升酒を頼むよ。酒はやっぱり升で飲むのが一番だからね」と言います。
「はいはい。茨、日本酒でいいんだね?銘柄は?」と赤毛が聞くと、茨は「野暮は言わないよ。銘柄なんて何でも酒は酒だよ」と適当なことを言います。「はいはい」と、赤毛もそこは手慣れているようです。

「……ねえ。一応聞くけどさ、茨って酒の味わかって飲んでる?」と尋ねると、茨は胸を張って「酒はのめりゃいいんだよ!」と答えます。たわわな胸がぷるんと上下しますが、そこに色気は感じません。だって茨だもん……たとえ全裸だって私は何も感じないと思いますよ。

「でもさ、私、今ウィスキーしか飲んでないけど、サントリーの角瓶とニッカのブラックニッカとでは結構味に差があると思うんだけどね。多分、茨が飲んでも差はわかると思うよ」というと、茨は「じゃあ、あんたは数年前に飲んでたサントリーのトリスと角瓶の差がわかるかい?」と意地悪な笑みを浮かべながら聞き返します。
「……何せ数年前だからね。覚えてるわけないでしょ」と言うと、「あたしもだよ。あたしたち鬼は、元々は朝廷に追いやられた古代の神だ。酒なら何でも浴びるくらいに飲んできた。だから、何を飲んでもそうそう覚えていられないんだよ。よっぽど強烈なやつに当たらない限りはね」とか。

 「はあ。なるほど」と私は箸でおひたしをつまんで咀嚼します。そして……「ぶっ。何これ……」と嫌な顔を作ってしまいました。
「ハマボウソウです。一応、高級食材なんですよ?」と姫様が言いますが、私はおひたしをずずっと真理矢のそばに追いやって、「これ要らない」と告げます。

「姫様、普通のほうれん草のおひたしください。私には高級食材は高尚すぎます」というと、姫様は「確かに、えぐ味がありますけどね……」と苦笑いしながら厨房に引っ込みました。

 そして、真理矢が何故か固まっているので、「どうしたの?」と聞くと、「ね、姉様の食べたものが僕の口に入るということは、ちょっと刺激が……」と言うので、「あのねえ、私たち夫婦でしょうが。今更回し食いぐらいで赤面しないでよ……」と、私までちょっと恥ずかしくなってきます。

「じゃあ、これ下げてもらって……」と言って小鉢を取り上げようとすると、真理矢は慌てて「食べます!食べますから!」と鉢を引き戻します。
「あのね。私たち、確かに女同士だから、男女の営みとは違うかもしれないけど、それなりに営みだっていたしてるわけでしょ?なんで今更そんなに恥ずかしがるのよ」と聞くと、「……実は、僕にもわかりません。どうしてこんなに恥ずかしいのか。でも、ドキドキするんです」と、真理矢は少しすねたように言います。

「ははーん。真理矢はね、いつまでもあんたに『恋』してるんだよ。夫婦になったって、いつでも手を繋ぐタイミングを計ったり、腕を組むだけでときめいたり、そういう恋がしたいんだろうね」と、茨がニヤニヤしています。くっそ、自分に関係ないからって勝手なこと言いやがって。

 ……でもまあ、茨の言うことも一理あります。真理矢は、今まで恋愛をしたことがなさそうなので、しかも女同士の夫婦なんてなったことないでしょうし、そういう中学生の恋愛みたいなのがしたいのかな?と。
 そんなことを思ったスピリット界体験でした。……そういえば、私もそういう恋愛したことないな。スピリット界では、メローネと手を繋いだり恋をエンジョイしていますが、現実ではからっきしです。なんでしょうね?異性に求めるハードルが高いんでしょうか。確かに、「速水もこみち似で年収2000万の25歳が理想」とか言ってますが。

 処女こじらせるとろくなことないですね。だからって今すぐ捨てたいってわけでもないですし、すぐ言い寄ってくるような人は信用ならんと思ってますし。メローネと真理矢とだって、付き合って半年は結婚はしないって言ってましたし。恋愛に対して何か、潔癖なところがあるのかもしれません。
 はあ、これでリアルで結婚なんてできるんですかねえ。ため息、です。
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おっさんキラー、かみな

 ハオルチアですが、やっぱり、私の思っていたものとは違うものが届きました……。
 私は、普通のオブツーサという種類が欲しかったのですが、ショップの人が気を利かせたのだかわかりませんが、珍しい種類のが届きました。
 でもこれ、ハオルチアっぽくない……ということで、オブツーサ表記されている商品をまたポチりました。
 これで多肉4鉢目……。増えすぎだろ!!

 さて。
 スピリット界の話もしておかねば。

 茨は、エレ君について教育を行っているようです。
 最初は、何もかもが怖々だったエレ君ですが、今ではだいぶ普通の生活をできるようになっています。
 まだ、買い物はできないようですけどね……。こっちの世界には税金がないので、計算はただ足すだけなのですが、それもできないようです。
 まあ、今まで札束があってもゴミ箱をあさって、野外に寝泊まりしていた生活のようですしね。

 あと、私がメローネを連れて歩いていたら、すれ違ったエレ君がびくっと肩をふるわせました。
 で、「どうしたの?」というと、「……男の人は苦手です……」と。どうやら、エレ君をいじめたのは男性が大半だったようです。エレ君も少年なのですが。
 メローネは、少し考えてから、エレ君に視線を合わせるようにしゃがんで、「大丈夫だ。俺は何もしない」と言いました。
 
 不思議と、それでエレ君は気持ちが和らいだようです。
 エレ君と別れて、「メローネ、子供の扱い慣れてるの?」と聞くと、「いや?野生動物にするように振る舞っただけだ」と。
 メローネの話では、野生動物はとにかく視線を合わせるのが大事だそうで。逆に、怯えさせるためには、視線を高くすることが効果的だそうです。

「ふーん。そういえば、子供相手には手を広げて何も持ってないアピールするのもダメみたいだね。体を大きく見せるから、怖がらせるばかりなんだって」と私は言います。
「……メローネの子供かあ。私とメローネの子供だったらちょっと見てみたいかも」というと、メローネは「俺の魂を受け継いだ男を派遣してやろうか?」と言ってきます。
「うん……うん?ちょっと待って。それは困るんだけど。薬飲んでるから妊娠できないし、そもそも魂を受け継いでるからってメローネとは別人なんでしょ?それは嫌だよ」と私は訴えます。
「良い案だと思うんだが」とメローネが不服そうなので、「まあ、お気持ちだけ受け取っておくよ」と言います。

「ってか、私、モテへんしねー。まあ、好きな人にだけモテれば良いんだけど、なかなかそういうわけにもいかなくて。50代の結婚焦りーのなおじさんにしかモテないしね。しかも経済力ない。最悪ですよ。もう、そりゃ最悪ですよ」と言うと、「おっさんにモテるのか。一番要らないモテ期だな」とメローネも賛同します。

「ね?私は別に、おっさんキラーじゃないのに。でも、昔から年上の人には可愛がられるんだよねえ……。だから30代になった今も、50代のおっさんとかにモテるの。しかも50くらいの未婚の人ってガツガツしてて怖いの。多分、『これ逃したら次はないかも知れない』ってことでアピールしてくるんだと思うんだけど。……まあ、だからって20も離れてる女に手を出すなよって話なんだけど。確かに、私も、気が合えば年齢は関係ないと思うよ?でも、ろくに話もしないで、しかもこっちの話も聞かないで、こっちをじーっと見つめてたり、『メールアドレス教えて、住所教えて』って人はねえ」
 私は、盛大に愚痴をこぼしますが、メローネは「そうだな」と頷いてくれます。聞き上手の男はモテる。

「はあ……今は、なんとか落ち着いてるけど。でも、私、年上なら経済力がある程度あってほしいんだよね。おじさん方にすると、生活保護の人とかいるし、そういう人とお付き合いしたって先が見えてるでしょ?やっぱ男は甲斐性がないと」と言うと、「……俺は一応甲斐性を出してるつもりだが」とメローネがぼそりと言います。
「ああ、メローネはいいの。だって、美形だしにゃはー。今の仕事が辛かったらいつでも養うからね」とウィンクすると、メローネは「……ふう」とため息をつきます。

「で、そのおっさんはどうするんだ?」と聞かれ、私は「最低限の接触しかしてないよ。……といっても、うちの職場は障害者の人のための職場だから、それで都合の良い妄想ストーリー作られてるかも知れないけど、そこまで気にしてられないしね。帰り道で待ち伏せとかは、女の子にしかされたことないし」と言うと、「待て。女にはされてたのか?」と両肩を掴まれます。
 私はくすりと笑って、「そういう意味でじゃないよ。多分、向こうは友情の延長線だと思うんだけど。知的障害のある子と一時期仲良かったことがあって、色々話してたらそうなっただけ。今は、その子とも距離を置いてるから大丈夫。でも、ホントにピチピチのイルカのような人と付き合いたい。速水もこみち似で年収2000万の人と付き合いたい。あと、夫は2人欲しい。稼いでくる人と家事する人」というので、メローネは「スピリット界では叶ってるじゃないか」と言います。……まあ、確かにね。

「んん、まあ、メローネが頑張ってくれてるし、うちの館も安泰だよ。また、時間ができたらアルテミスにも顔出したいな」というと、「……エレは連れて行くなよ。子供が酒場に来ていると思われる」と言われます。
「サーシャが大丈夫だったなら、エレ君も大丈夫だと思うけど……でもまあ、気をつける」と、私はふにゃっと笑ったのでした。
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サーシャの今後について

 前回の「サーシャの義父襲撃事件」の後、私たちは何となく立ち尽くしていました。
 というか、私の頭脳の処理がまだ終わっていないので、真理矢も茨も動けない、セルフィはいつも通りに何を考えているのかわからない態度で扇子を閉じたまま、いじっていましたし。

 しばらく経ってから、サーシャがぽつりと「お茶を入れるわ」と言って義父の倒した椅子を起こし、応接間を出て行きました。

「……さて。かみな、あなたどうするつもり?あのダンピールは、確かにかみなには危害を加えるつもりはないようね。結界も発動しなかったし、門番も反応しなかった。でも、サーシャには別のようだけど」と、頃合いを計って、セルフィががたりと椅子に座ると、私も、とっさに立ち上がったままだった姿勢から、椅子にすとんと腰を下ろします。
「……この館のガイドや妖怪や精霊に危害を加える者は許さない。それは、決定済みなんですけど……」と私が言うと、真理矢が背中に槍をしまって、「それならば、次に来た時は、遠慮なく攻撃していいのですね?」と言います。

「ちょ……ちょっと待って。まだ頭がついていかない。できれば、争うことは最後の手段にしたいんだけど、あの父親の態度からすると、考えを軟化させることは難しい。よっぽどのショックがない限り、ああいう人間は変わらない。でも、争うとかはちょっと待って」と、私はこめかみを左手で押さえながら、言います。
「はっ、そこまでわかってて、力で解決するって方法を思いつかないのが不思議なもんだね。あの人間……正しくは、半人半吸血鬼か?は、サーシャに危害を加えようとしたんだろ?それならば、あたしたちも攻撃を仕掛けても良いじゃないか」と茨がうずうずしているので、「日本人はね、戦後から私みたいな考えの人間が多いんだよ。攻撃されたら攻撃を仕返すと、結局何も変わらないのはわかってるしね。……でも、茨の言うこともわかる。攻撃されたら、やり返すという強さも今後は視点にいれなければならないとね」と、私は言います。

「……それより、リリーは平気だろうか?あの義父が私の所に来たということは、リリーの所にも行くかもしれない……。リリーの情報は漏らしていないけど、サーシャの居場所を突き止めたくらいだから、ユフィさんの所にも行くかも……うーん」と、私はこめかみを揉みながら言います。

「ふうん。リリーっていうのは、サーシャの姉だね?あたしは直接会ったことはないが……確か、サーシャと違って、内気で大人しい性格だって聞いてるけど」と、茨が言います。
「うん。リリーは虐待されてなかったんだけど、ちょっと心配だな」というと、「平気じゃないかしら。あそこの城にも、攻撃型のガイドと防御に優れたガイドがいるって話だし。ダンピールごときの一人や二人、どうにでもなるんじゃないかしら」と、セルフィが楽観的なことを言います。

「そうかな……またユフィさんには迷惑かけちゃうかもしれないけど」と私がつぶやくと、セルフィは「迷惑をかけているのはあのダンピールでしょ。何でもかんでもあなたは背負い込もうとするけど、ヒロイン気取りもほどほどにした方が良いわよ」と扇子を開いたり閉じたりしています。

 コンコン、というノックの音と共に、「お茶が入ったわ」とサーシャの声がするので、私は「どうぞ」と答えます。
 サーシャはいつも通り、茶葉を蒸らして、紅茶を人数分、注いでいきます。
 その手は既に震えが止まり、私は少し安心しました。

 紅茶をサーブし終わったところで、サーシャはティーセットのそばに立ち、「あ、あの……セルフィ、ありがとう。かばってくれて」と言います。
 セルフィは、「あら?あなたが偶然私の後ろに行っただけよ」と言いますが、もちろんそれは誰にでも嘘だとわかります。
「それに、真理矢も、茨も。真理矢はお父さんの腕を切り落とすつもりだったんだよね?茨だって、殴りかかるところだった。私のせいだね。ごめん」と、サーシャは大きな赤い瞳に涙を浮かべています。
「それと……かみな。色々迷惑かけちゃってごめんね。町に変な噂が流れたら嫌だと思うけど……わ、私も、ここを出て行こうとか思ったりしたけど……かみなたちと離れるのは嫌。だから」
 と、言葉を切ります。

「お願い。私をここに置いてください。かみなたちにはまだ迷惑をかけちゃうかもしれないけど。でも、わがままを許して。お願いだから、私をここに置いてください」と、頭を下げます。
「当たり前じゃない。馬鹿だな」と、私はサーシャに言います。
「私が今更、サーシャを手放すと思う?誰に何を言われたって、私はサーシャを手放さない。そりゃ、サーシャ自身が『ここに迷惑をかける』という理由以外で、そうだな。たとえば、『やりたいことが見つかった』とかでここを出て行くのは賛成するけど、あなたにはまだ帰る家が必要でしょ?それならば、私はあなたの住む場所を制限はできない。そんな権限、私はとっくに捨ててるからね。この館は確かに『私の家』だけど、『皆の家』でもある。だから、サーシャはここにいて良いんだよ」

 私は、そう言うと、紅茶で喉を潤します。
「そう……ありがとう」と、サーシャはまた一礼します。
「もう、水くさいな。サーシャはいつも通り、堂々としていれば良いの。サーシャの生き方はサーシャの生き方。それを止めるものはない。言ったでしょ?私は、サーシャをメイドとして雇ったわけじゃないから、嫌なら掃除も料理もしなくていいって。何かをする気がないのなら、それでいい。人間だって妖怪だって一緒だよ。『育ってきた環境が違うから好き嫌いは否めない』って、有名な歌にもあるでしょ?」と言うと、「……私、それ知らない」とサーシャがぽつりと言います。

「あはは。ようやくサーシャらしさが出てきたじゃない。サーシャは、正確に言うと、『吸血鬼の亡霊』。つまり、もうあの父親を父親として見なくても良いの。無理して自分を殺した父親を好きになる必要はない。憎んだっていい。……まあ、そこのところはサーシャに任すけど」
 私はそう言って、白磁のティーカップを見つめます。そして、「ね?」と、サーシャに視線を移して、微笑みました。

「……う……えぐ……っふ」と、サーシャの涙腺がついに決壊します。
 嗚咽をあげるサーシャを、今度はセルフィが「よしよし」と言って抱き寄せて膝に半身を乗せるような格好にさせます。

 私たちは、視線を交わし合いながら、ふっと微笑みました。サーシャは館になくてはならない存在。それを、再確認したのです。
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